米ゴールドマンサックスが2018年7月に公開した報告書によれば、2017年の世界のeスポーツ市場規模は6.6億ドル(約700億円)。2022年には29.6億ドル(約3300億円)に達する見込みだ。国内についてはGzブレインが、2018年の市場規模を約48億円、ファン数を383万人と推計(2018年12月発表)。2022年に約100億円、785万人まで伸びると予想している。
この急成長市場に商機を見出し、関連事業に乗り出したのがNTT東日本だ。ゲームソフト大手のカプコンが東京・秋葉原で3月21日に開催した「ストリートファイターリーグpowered by RAGE」グランドファイナルにICTサプライヤーとして参画。パブリックビューイング(PV)会場として仙台の通信ビルを提供したほか、会場内のICT設備、中継用の映像配信システムを手がけた。
秋葉原UDXビルで開催されたグランドファイナルの様子。会場内は立ち見客で埋め尽くされるほどの人気で、パブリックビューイング会場(仙台)の来場者も延べ200人を超えた |
NTT東日本はこれを端緒に、eスポーツ関連事業の拡大を狙う。ビジネス開発本部 第二部門 アクセラレーション担当 主査の影澤潤一氏は「地方自治体から大会誘致をやってみたいといった引き合いを結構いただいている」と語る。カプコン以外にも「アライアンスの話を進めており、今回の仕組みをパッケージ化してソリューション提案していく」
秋葉原の大会会場と仙台のPV会場とを結んで、エキシビジョンマッチも行われた |
高品質映像のアップロードに最適核となるのが、競技映像を中継するためのネットワークと映像配信基盤だ。今回は、フレッツ網からAWS等に閉域で接続するサービス「クラウドゲートウェイ アプリパッケージ」を用いて秋葉原会場とPV会場、AWSを接続。AWS上の映像配信システムも含めてNTT東日本が提供した。
クラウドゲートウェイ アプリパッケージは、ベストエフォートながらインターネットに比べて高速に通信できること、NGNの回線認証機能が使えること、フレッツ回線を引くだけで短期間にクラウドとの閉域接続網を導入できることなどが特徴だ。そのため、「映像配信サービスでよく使われている」とビジネス開発本部 第一部門 クラウドサービス担当 担当部長の高橋立典氏は話す。プロスポーツや音楽ライブの映像配信でも実績が豊富だ。
各地のスタジアムから試合映像をAWSに送り、地方テレビ局にニュース映像用素材として配信するのに使われたり、音楽ライブの映像配信サービスでは、複数のカメラで撮影した映像をAWSに送り、視聴者が好きな角度に切り替えられるマルチアングル映像に加工してファンに配信している。「高品質な回線で映像をアップロードしたい方の利用が増えている」と高橋氏は言うが、新たにeスポーツという用途が立ち上がりつつある。
ネットワークだけでなく、「AWSの機能を使って、映像を受信・配信する基本的な仕組みも我々が作って提供している」(クラウド担当 主査の増子亮氏)という点も特徴だ。ユーザーはこの基盤上で、VRやマルチアングルといった付加機能の開発・提供に専念できるという。
図表 eスポーツ配信のイメージ
秋葉原の会場内では、他にも観客の利便性を高めるICTソリューションを用意した。ドア開閉センサー等を使ってトイレの空満状況を表示する「Throne」、NFC対応スマホをかざすと大会情報を表示する「スマートプレート」だ。トイレの混雑解消に役立ったうえ、障がいを持つ人からは、多目的トイレの空き状況が確認しやすいことが好評だった。