2019年にラグビーワールドカップ、2020年に東京オリンピック・パラリンピックと来年以降、世界的なスポーツイベントが日本で開催される。 「スポーツ競技とICTとの組み合わせは大いに可能性がある」と語るのは、NTTドコモ スポーツ&ライブビジネス推進室室長の尾上健二氏だ。
ドコモは2020年の商用サービス開始に向けて目下、5G(第5世代移動通信システム)のネットワークを構築している。5Gの「高速・大容量」「低遅延」「多数端末接続」といった特徴をスポーツ分野に活かせないか――。こうした観点から2017年12月24日、ラグビートップリーグ「NEC グリーンロケッツ VS NTTドコモ レッドハリケーンズ」の試合において、新たな観戦スタイルを実現するためのコンテンツ・ネットワークを利用した体験イベントが開催された。
秩父宮ラグビー場で行われた ラグビートップリーグ「NEC グリーンロケッツ VS NTTドコモ レッドハリケーンズ」戦で体験イベントが開催された |
今回はスポーツの「見る」側に着目し、5Gを活用した①「ARライブ映像視聴システム」、②スマートフォン用LMV(Live Multi Viewing)という新たな観戦スタイルを体験するというもの。
ネットワーク構成の概要 |
ARライブ映像視聴システムは、フィールドの複数箇所(今回は4カ所)に設置されたカメラから送られてくる映像を低遅延・高レスポンスで切り替えるLMVサーバーから5Gの基地局および移動局を経由し、観客席のWi-Fiを通って観客のスマートグラスに配信される。
スマートグラス上には、試合のライブ映像のほか、別視点映像や選手情報、観戦情報テキストが表示される。これらのコンテンツはドコモが開発した「空間インターフェース技術」によりスマートグラスに搭載された赤外線センサーで手の動きを感知し、コンテンツを自由に動かしたり、動かした位置に応じて拡大表示するなど直感的な操作を行える。
例えばラグビーの試合であれば、観客席から離れていて肉眼では見えづらいスクラムの様子や、活躍している選手のプロフィールなどを試合から目を離すことなく見ることができる。ドコモの担当者は「ゴルフや陸上競技のように、広いスペースを使う競技で特に有効なのではないか」と話す。
スマートグラス上には別視点映像や観戦情報テキストも表示される |
実際に装着してみると、複数の映像を同時に見たり、手をかざして映像を押すような動作に最初はとまどうが、慣れるまでに時間はかからない。手を動かすだけなので、応援グッズやドリンクで手がふさがっている場合でも支障なく操作できる。
スマートグラス正面に搭載された赤外線センサーで手の動きを感知する |
スタジアムのように多くの人が集まる場所では多チャンネルへの同時送信が必要になるため、5Gの高速大容量・低遅延、多数端末接続といった特徴が強みを発揮するという。