IoT市場の成長とともに、同分野に力を入れるMVNO/MVNE事業者も増えてきた。その中でも、特にグローバル展開への対応とセキュアな閉域接続サービスを強みとしているのがNTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)だ。
NTT Comが提供するIoT/M2M向けモバイルネットワークサービス「Arcstar Universal One グローバルM2M」は、グローバルキャリアとの提携により、世界約200カ国・地域で閉域接続を利用可能。海外においてもデバイスからのデータ収集や情報のやりとりを安全に行える。同社ネットワークサービス部 販売推進部門 MVNO担当の青木貴史氏は、「これまでインターネット経由の通信を利用していた事業者様からの引き合いも多い」と語る。
様々な分野のパートナーとの強力なアライアンスも、NTT Comの大きな強みだ。例えばIoTサービスの海外展開にあたっては、ルーターなどのネットワーク機器調達も必要となる。そのような場合にも、グローバル対応のM2Mルーター導入支援などを手がけるパートナー企業と連携し、各国の技適・認証制度への対応も含めてトータルで支援できる。
「100円SIM」でベンチャー企業とのサービス共創も加速特にこの1年ほどで、NTT ComのIoT向けモバイルサービスを利用する事業者の裾野は大きく広がっている。きっかけとなったのは、昨年7月にリリースされた「100円SIM」だ。1MBまでなら月額100円(税別)で25カ国・地域において閉域接続を利用できる料金プランは、通信量の少ないIoTサービスを提供する事業者、とりわけ通信コストを抑えながらグローバルでサービスを展開したいという様々な企業のニーズに合致した。
100円SIMの提供開始後の大きな変化として、青木氏は「ベンチャー企業を含む幅広い分野のサービス事業者にNTT Comのネットワークが『選択肢』として認識されたこと」を挙げる。
IoTの分野でも、革新的なサービスを生み出すベンチャー企業は多い。NTT Comはこれまで、そうした企業に「敷居の高さ」から敬遠されることも少なからずあった。「そのような先入観が100円SIMによって払拭されつつある。ベンチャー企業間の横のつながりで『ネットワークはNTT Comと組めば安心』と徐々に認知していただけるようになってきたのではないか」と青木氏は強調する。
ベンチャー企業のサービス立ち上げに初期段階から関わり事業化を支援する、サービス共創の事例も増えている。連絡網アプリ「マチコミ」の開発・運用を行うドリームエリアが今年4月に提供開始した児童見守りサービス「みもり」も、その1つだ。同サービスで扱う児童のリアルタイムな位置情報などのセキュアな通信環境を実現するために、100円SIMが活用されている。
また、100円SIM以降に顕著になったもう1つの変化として、以前よりNTTグループで推進してきたBtoBtoXの事業モデルも「BtoBtoBto…X」といったように広がりを見せているという。
ネットワークサービス部 販売推進部門 MVNO担当 主査の小川瑞希氏は、このBtoBtoBto…Xについて「当社が支援するミドルB(BtoBtoXの真ん中のB)に相当するベンチャー企業などが展開しているサービスに大手企業が関心を寄せ、新たなパートナー(その先のB)として加わることで、一気に販路が拡大するようなケースも出てきています」と説明する。
「eSIM」に対応したサービスを提供予定こうした現在の状況について、「NTT Comではこれまで様々なIoTビジネスの芽を見つけ、育ててきました。それらの一部が実を結び始めています」と表現する小川氏。その一方で、NTT Comは次の一手に向けた「種まき」にも継続的に取り組んでいる。代表例ともいえるのが、昨年7月にスタートしたMVNO初となる「eSIM」の実証実験だ。
遠隔で通信プロファイルを書き換えられるeSIMは、グローバルでIoTサービスを提供・活用する企業にとって様々なメリットがある。100円SIMの優位性が発揮できない大容量通信が必要な場合や、ローミングが規制されている国・地域においても、eSIMなら挿し替え不要で最適な現地キャリアの回線を利用できる。IoT機器にあらかじめeSIMを組み込むことで、出荷先となる国・地域の通信環境に合わせた製品仕様の変更(作り分け)も不要となる。
小川氏は「例えば、これまでIoT機器のモノづくりやモノ売りのみ行っていた企業にとっても、eSIMを製品に組み込むことで付加価値として通信もセットにしたリカーリングビジネスを展開しやすくなります」と補足する。
なお、NTT Comでは従来のSIMのようにキャリアからのレンタルではなく、自社独自発行でのeSIM提供を目指すという。これにより通信のオン/オフなども柔軟にコントロール可能となり、未稼働時の通信待機コスト削減などが期待できる。また、SIM内に独自のアプリを実装することも可能だ(図表)。
図表 従来のSIMと比較したeSIMのメリット
その特性を活かし、NTT Comでは今年3月より大日本印刷(以下、DNP)と共同でeSIMにSAM(Secure Application Module)の機能を組み込んだ「セキュリティSIM」の開発にも取り組み始めた。セキュリティSIMは、暗号鍵などを用いたIoT機器の識別・認証、通信データの暗号化と真正性の確認、ソフトウェア改ざんの不正検知などを行う機能を備えるという。
eSIMの実証実験はDNPのほか数社との間で進められており、「すでに技術的な仕組みは整っています。eSIMを活用したサービスの早期提供に向けて準備を進めています」(小川氏)とのこと。
NTT Comでは5月23日(水)~25日(金)に開催されるワイヤレスジャパン/ワイヤレスIoT EXPO 2018において、eSIM活用の様々なユースケースを紹介する予定だ。ブースでは、前述したドリームエリアをはじめ多様なサービス事業者の成功事例や、NTT Comと共にそれらのサービスを支援するデバイスベンダーなどパートナー各社のソリューションも展示する。
IoT分野への参入を検討している企業にとっても、すでにIoTビジネスを展開中で何らかの課題に直面している企業にとっても、多くのヒントが得られる場となるはずだ。
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