NTTは2025年7月11日、IOWN APN(オールフォトニクス・ネットワーク)と低負荷データ収集通信制御技術を活用した、鳥獣害対策をはじめとする多数の高解像度カメラ映像による画像認識処理の実証に成功したと発表した。
近年、高齢化や担い手不足、作業の危険性といった背景から、AIカメラなどのデジタル技術を用いた鳥獣害対策が各地で行われている。ただ、現行の鳥獣害対策には、様々な課題がある。
NTTアクセスサービスシステム研究所 アクセスサービスシステムプロジェクト 研究員の津上諒平氏は、「利用できる通信帯域とサーバー性能に限りがあるため、現状では少数の低解像度カメラによる映像データの収集に留まっており、罠管理など、低精度で局所的な監視しか実現できていない」と指摘した。
こうした課題を解決し、高精度かつ面的な監視を実現するためにNTTが開発したのが、「低負荷データ収集通信制御技術」である。TCP/UDPやRDMA(Remote Direct Memory Access)を用いて映像データを収集する際のボトルネックを解消できるという。
従来のTCP/UDPを活用して映像データを集める際には、「データの送受信の際、まずカーネル側のメモリにデータを置き、それをCPUでアプリ側のメモリにコピーして処理する必要があるので、CPUに負荷がかかる」(津上氏)。高解像度カメラが増えるとコピーの量も増大し、サーバーの処理能力が追いつかず、結果として接続できるカメラの数が制限されてしまうという。
RDMAによるデータ収集は、CPUを介さずGPU同士で直接通信するため、CPUの負荷を減らせるというメリットがあるが、「RDMAは、広帯域かつパケットロスの少ないデータセンターネットワークに最適化されている。多数の端末が共用するネットワークへそのまま適用するとパケットロスが発生し、通信速度が低下してしまう」と津上氏は説明した。
今回NTTが開発した低負荷データ収集通信制御技術は、パケットロスを抑止しながらRDMAの通信性能を確保する技術だ。具体的には、カメラなどの各端末が映像データを送信する際、コントローラーに通信の開始を要求する。そしてコントローラーが、複数の端末が同時にデータを送信して通信が衝突しないよう、開始・終了のタイミングを調整・制御することで、パケットロスを防げる仕組みになっているという。
また、速やかな分析が求められるデータは、即時に通信開始・終了を行い、分析を急がないデータについては、一定量データを集約してから通信することで、タイミング制御に伴うオーバーヘッドを最小限に抑えながら、通信性能のさらなる向上を図れるとのことだ。
同技術のシステム構成は、「送信端末やデータ収集サーバー、集約スイッチともに市販の製品を使用し、ソフトウェアをインストールすることで動作可能」(津上氏)だ。