デジタル分野の日EU協力

2025年は、私が現在勤務する欧州連合(EU)日本政府代表部が、前身である欧州共同体(EC)日本政府代表部として1975年(昭和50年)に設立されてから、50周年の記念すべき年でした。日本とEUは、民主主義、法の支配といった基本的価値を共有するパートナーとして、国際社会の課題に共に取り組んでいます。

私が担当する情報通信・デジタル政策の分野では、1987年(昭和62年)以来、双方の事務方幹部が出席する定期的な協議(現在の「日EUICT政策対話」)を通じて、時代に合わせて様々な課題に共に取り組んできました。2025年3月に第30回の協議を迎えるに当たり、自席のキャビネットから古文書を掘り起こしてみたところ、第1回の協議の議題には、ISDN、HDTVといった懐かしい用語が並んでいました。

2023年からは、日EUデジタルパートナーシップに基づき、年1回の閣僚級会合を実施しています。2025年は、欧州委員会のヴィルックネン上級副委員長が5月に来日し、平デジタル大臣などと意見交換しました(写真)。

デジタル分野の日EU協力

2025年の閣僚級会合の共同声明の「競争力強化」と「経済安全保障」という2つの柱は、EUの現在の優先事項を反映したものです。ごく簡単に最近のトピックをご紹介します。

2024年12月に発足したフォン・デア・ライエン欧州委員会委員長の2期目の体制は、「競争力強化」の必要性をたびたび強調しています。2024年夏に公表され、関係者に広く読まれた欧州中央銀行ドラギ前総裁のレポートは、デジタル技術で競争力を失い、米中両国に遅れをとったことが経済低迷の原因だと指摘し、規制簡素化や官民投資促進が必要であると主張しました。

もう1つの優先事項の「経済安全保障」ですが、EUでは、他国へのサービスや資源の依存が「武器化」されることを懸念し、域内のリスク特定、サプライチェーン強靱化や産業基盤強化を進めています。ときに使われる「戦略的自律」や「技術主権」といった強いニュアンスの言葉に、EUの危機感が表れています。

こうした課題は、日本にも概ね共通するもので、今後更なる成長が期待されるデジタル分野において日本とEUが互いに優れた技術を生かして共同で研究開発を行うことは、イノベーションの推進による競争力強化と、特定国に過度に依存せず同志国で相補い合う経済安全保障の双方の実現に有用です。まずは、2025年4月からBeyond 5G・6Gに向けた共同研究が開始され、また、近く量子技術に関する共同研究も開始される予定です。

このように、国際情勢の先行きが不透明な今こそ、価値観を共有し、社会・経済で似たような課題を抱える日本とEUが協力できる余地は大きく、長年の積み重ねの上で、私も微力ながら日EU関係の更なる発展に取り組んでいきたいと思っています。

…ちなみに、2025年春の寄稿の際に、私が契約している通信事業者の光ファイバーがいまだに自宅に開通していない、と書きましたが、ちょうど夏休みシーズンに自宅周辺で工事が始まり(といっても歩道に敷き詰めてあるレンガを1つずつはがして、その下にケーブルを通すという原始的な工事ですが)、秋からようやくサービスが利用できるようになりました。通信事業者の名誉のために付記しておきます。

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