光トランスポート(WDM)市場において成長著しいセグメントは、データセンター(DC)間接続だ。調査会社の英OMDIAによれば、2023年から2029年の「DC間WDM」の成長率は約7%。通信事業者向けを含む「その他WDM」の約3%を大きく凌ぐ。
日本国内でも、政府が推進するオール光ネットワークの社会実装とデータセンターの分散化という2施策が、DC間接続市場の成長を後押しする。このDC間接続にフォーカスすることで、光トランスポート市場でのシェア拡大を狙うのがNECだ。
NECは、NTTのIOWN構想における基盤ネットワーク「オールフォトニクス・ネットワーク」(APN)関連技術を共同開発している。IOWN推進団体であるIOWN Global Forum(IOWN GF)が規定するAPN仕様に準拠する製品もすでに商用化。低遅延通信と省電力というオール光化の利点を活かし、このAPN準拠製品をDC間接続に活用していく方針だ。
もう1つ、NEC トランスポートネットワーク統括部長の佐藤壮氏が事業の成長軸に挙げたのが「オープン化」だ。光伝送装置を構成するハードウェアとソフトウェアを分離し、オープンな標準インターフェースを介して柔軟な組み合わせを可能にする。
これによって、次の4つの価値を提供するという。
1つが、ベンダーロックインの排除による投資最適化。2つめは、「機器調達先の多様化によってサプライチェーンリスクを軽減できる」ことから、レジリエンスの向上に貢献できる。
3つめに、オープン化によって新規ベンダーが参入すれば、イノベーションが加速することが期待できる。最後に、マルチベンダー環境下でオペレーション業務の変革が促されれば、サービス提供の迅速化にもつながると同氏は話した。
NECはこれらの価値を提案しながら、国内外のDC間接続に「小規模なAPNを適用して実績を作っていく」方針だ。近い将来、データセンターの分散化が本格化すると見込んでおり、佐藤氏は「2025年後半から2026年が商用導入のスタートポイントになるのでは」と見込む。
これを推し進めるため、NECでは、IOWN GF以外のオープン化仕様に対応した製品の開発に力を入れる。