無線通信というと最近は5GやWi-Fi6が話題の中心だが、忘れてならないのはLPWAの存在だ。
低消費電力・広帯域・長距離通信を特徴とするLPWAは、IoTの構成要素の1つとして重要な役割を果たしている。世界的にIoT化の動きが進むなか、LPWAモジュールの出荷台数は2020年にグローバルで4億台を超えるとの予測もある(IHS Technology調べ)。
それでは、国内のLPWA市場は今後どうなるのか。
「2020年は、Sigfoxの先頭集団が拡大フェーズに入るだろう」
こう話すのは、京セラコミュニケーションシステム(KCCS)取締役 LPWAソリューション事業部 部長の松木憲一氏だ。
(左から)京セラコミュニケーションシステムの松木憲一氏、SIGFOX Japanの吉澤徳明氏
KCCSはSigfoxのオペレーターとして2017年2月にサービスを開始。併せて全国に基地局を展開し、2019年3月末には人口カバー率95%を達成した。
サービス開始直後の早い段階から実証実験を行ってきた企業の中には、一定の成果を得て、大規模導入に移行する動きが見られるという。
一例が、総合エネルギー事業会社の日本瓦斯(ニチガス)だ。
同社は、ガスメーターをオンライン化し、ガスの使用量をリアルタイムに計測できるNCU(Network Control Unit)「スペース蛍」を開発した。
これまで作業員が毎月1回訪問し計測していた検針データが、遠隔から1時間に1回自動計測できるようになり、従来の720倍もの精緻なデータの把握が可能になる。そのネットワークに、Sigfoxを用いたIoT向けデータ通信サービス「SORACOM Air for Sigfox」が採用されている。ニチガスでは2020年度中に、LPガスを利用している約85万件にスペース蛍を導入する計画だ。
Sigfoxは、欧州では物流における輸送用コンテナやパレットのトラッキング(追跡)にも活用されている。国内でもニーズが高まっている分野であり、2020年以降、遠隔検針や物流で大規模案件が出てくることが予想されるという。