5つの研究成果・16の高専によるIoTへの取り組みを一挙展示 総務省

総務省ブースでは、「電波資源拡大のための研究開発」と「高専ワイヤレスIoTコンテスト2022(WiCON2022)」の成果を発表する展示が行われている。

ワイヤレスジャパン2023 総務省ブース

「電波資源拡大のための研究開発」は、増大する周波数需要に対応するため2005年度から総務省が推進している取り組みだ。今回は昨年度終了した5件の研究課題が展示され、最前線の研究者らが来場者の質問に応じていた。

このうち、「電波の有効利⽤のための IoT マルウェア無害化/無機能化技術等に関する研究開発」は、横浜国立大学、情報通信研究機構(NICT)、九州大学、神戸大学、早稲田大学、セキュアブレイン、ジャパンデータコムの7者の取り組み。IoTの活用の広がりに伴い、IoT機器への攻撃も増大している。NICTの「NICTER観測レポート」によれば、2015年からの7年間で攻撃は8倍にも膨れ上がったという。こうした攻撃は無線リソースをひっ迫させるため対策を急ぐ必要がある。

そこでこの研究課題では、大きく分けてIoTマルウェアの分析・検知と、IoTマルウェアの無害化・無機能化という2つの課題に取り組んだ。前者では、マルウェアの“おとり装置”である高度IoTハニーポットを開発し、101種類の脆弱性攻撃と1万6160種類におよぶマルウェア検体を収集し、詳細を分析した。これを基に駆除技術を開発し、持続感染が確認された機器に対する駆除に成功したり、シミュレーションを行って無線不正通信の6割を削減するためのISPによる注意喚起活動に応用したりなどの成果を挙げたという。

また、複数のセキュリティ分析AIエンジンを構築、連携し、サイバー攻撃につながるマルウェアの分析を自動化する「ハイブリッド攻撃分析プラットフォーム」を構築した。Webブラウザ上で発生したイベントを時系列で一覧することができる上、そのイベントに関するセキュリティレポートや機器の情報などに自動でリンクを設定することができる。説明員は「従来はオペレーターがひとつひとつ調べていたが、その手間を省くものだ」と、IoT機器への攻撃に迅速に対応できることが大きな利点になると説明した。

ハイブリッド攻撃分析プラットフォームのダッシュボード

ハイブリッド攻撃分析プラットフォームのダッシュボード

「高専ワイヤレスIoTコンテスト2022(WiCON2022)」は、IoT分野の若手人材を育成するために開催されたものだ。会場ではコンテストに参加した16件の成果のポスター展示が行われ、高専の学生が説明に立っている。

いずれの研究課題も、地域の課題をIoTで解決しようとする試みだ。なかでも、仙台高専の「作業者の負荷軽減と安全配慮を実現する広域有害鳥獣捕獲支援システム」は、近年増加する野生鳥獣による農作物被害を、IoTを活用して解決する取り組みで、地域の狩猟者・農業者などの住民と連携して成果を挙げている。

野生動物は農地を荒らすだけでなく、最近では市街地への出没も頻発し、人的被害が懸念されている。一方、それらの駆除に当たる狩猟者は高齢化し、担い手不足も深刻化しつつある。そこで同高専では、鳥獣害が頻発するエリアに設置した箱罠にセンサーノードを設置して、それらをLPWAでネットワーク化した。罠の扉に取り付けた磁気センサーが捕獲時の扉の動作を検知し、通知を行う。これにより、従来は1日2回必要だった罠の巡視を、スマホアプリで罠の状況を確認してから行う形に変えることができたという。

箱罠に設置するセンサーノードの外観

箱罠に設置するセンサーノードの外観

また、有害鳥獣は山間地に出現することが多く、鳥獣の捕獲にあたる作業者は危険にさらされやすい。そこでLoRa、BLE、GPS、加速度センサーを一体化させた「LPWAタグ」を開発し、狩猟者が携帯することで作業者の安全を見守るシステムを開発した。

今後は、画像認識や加速度による捕獲鳥獣の推定機能の開発やWebアプリの開発など、地域住民とコミュニケーションしながらシステムの改良に取り組んでいくという。

展示と合わせて、会場内のセミナー会場Bでは、「電波資源拡大のための研究開発」の成果発表会が24日13時から、「高専ワイヤレスIoTコンテスト2022」の成果発表会が25日11時から開催される。数々の意欲的な取り組みが一堂に会する貴重な機会となるだろう。

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