藤子・F・不二雄のマンガ「パーマン」のコピーロボットをご存じだろう。ミツ夫がパーマンに変身している間、ミツ夫の姿かたちになったコピーロボットがミツ夫として過ごす。パーマンが任務から戻ると、コピーロボットとおでこ同士をくっつけて不在時の記憶を転送する──。
NTT人間情報研究所が手がけるAnother Meが、こんなマンガの世界を現実のものにするかもしれない。
NTTのデジタルツインコンピューティング(DTC)構想の中で、“ヒト”のデジタルツインを目指すのがAnother Meであるが、「IOWNがなければ実現しにくいコンセプト」と同研究所 デジタルツインコンピューティング研究プロジェクト アナザーミーG の深山篤主幹研究員は語る。
現在一般に言われているデジタルツインは、自動運転、ロボット制御、医療といった個別の領域ごとに利用するものだ。対して、DTC構想では、これら個々のデジタルツインをかけ合わせる手段を提供しようとしている。
デジタルツイン化した“ヒト”も、この多様な相互作用に加わる。そして、いくつもの複合的な未来像を提示し、新たな価値を創出することがDTC構想の大きな狙いだ。
Another Meは、人間の内面・個性をデジタル化し、本人と共存しともに成長する、分身のようなパートナーの実現を目指す。自分が一地点だけではなく、複数の場所に同時に存在し、複数の経験を同時に行うことができるような未来が構想されている(図表1)。
このDTC構想は、IOWN構想とほぼ時を同じくして誕生したという。デジタルツインを実現するには大容量・低遅延の通信インフラが不可欠だ。
さらに「我々の目指す世界観は、現状のようにエネルギーをどんどん使って計算するというパラダイムでは実現が難しい。光で演算するというよりリーン(無駄のない)な形にすることが、自分の分身としてのAIを持つというリッチな環境を実現するために必要」と深山氏。
つまり、IOWNの低消費電力が実現の鍵を握っているのだ。