生成AIは、IoTのレベルを一段上げるための土台になった──。
IoTの進化に生成AIをどう役立てるかについて、IoTプラットフォームSORACOMを提供するソラコム テクノロジー・エバンジェリストの松下享平氏はそう語る。
同社が生成AIの活用を始めたのは2023年。チャット形式で質問し、時系列データを解釈させたり、異常発生を知らせる閾値のおすすめ設定を聞いたりなど、IoTをより便利に使えるようにする「SORACOM Harvest Data Intelligence」を開始した。
IoTデータが溜まり、可視化はできても、それを分析して洞察を得るのは簡単ではない。そこで、データを読み解くツールとして生成AIを使おうというのが第一歩だった。
そこから1年、「IoTにおける生成AI活用の方向性がいろいろと見えてきた」。図表1に示した5つがそれだ。
1つが、マルチモーダル情報の認識だ。映像から物体や人を認識したり、画像から文字起こしをしたりと、マルチモーダルAIを使うことで、入力するデータの幅を広げ、多様なデータを容易に組み合わせられるようになる。
2つめは、「時系列基盤モデル」だ。時系列データに特化した学習済みモデルで、アマゾンのChronosやグーグルのTimesFMなど、様々なモデルが提供されている。
時系列データといえば、「これまではグラフ化して終わりだったが、生成AIは欠損データを補完したり、トレンドを言語化したり、さらに未来予測にも使える」(松下氏)。
3つめは、RAG(検索拡張生成)だ。情報検索機能を備えたAIを使ってデータ処理を自動化できる。
企業のデータは様々な場所に分散しており、IoTデータと結合するために、これまでは人間が汗をかいていた。これを生成AIが代替し、データの整形や意味付け等を自動化する。
4つめは、小規模言語モデル(SLM)。エッジデバイス等に搭載して、人に代わってプロンプトエンジニアリングを行うなど、LLMへデータや命令を投げる前処理を担う。
最後が、物理世界とデジタルツインを橋渡しするUI(ユーザーインターフェース)として使う方法だ。プログラムを書くのではなく、自然言語でソフトウェアや機械を操作できる。
エッジデバイスへのAIの展開を加速させるため、省電力なオンデバイス生成AI機能に対応するSoCを提供するクアルコムジャパン マーケティング統括本部長の泉宏志氏も、「自然言語でコマンドを出せるといった新しいUIとして生成AIが入ってくる」と予想する。例えば、Snapdragonを搭載したウェアラブル型AIデバイスに、米Humaneの「AI pin」がある。プロジェクターを搭載した小型デバイスで、音声やジェスチャーで操作し、手のひらに情報を表示する。