中小企業でもIoTで成果は出せますか?――中小企業こそ絶大効果

IoTの活用例は、資金も人も豊富な大企業に偏っているが、中堅中小企業にIoTができない理由はない。

むしろ、これまでも現場課題の改善活動やIT活用を進めてきている大企業と比べると、「中堅中小企業のほうがはるかにインパクトが大きい」と、RIETI/JPCの岩本氏は指摘。「情報通信技術を現場課題の改善に使えば、少ない投資でもものすごいリターンが得られる」と励ます。

6ページで述べた同氏主宰による研究会では、数年で目覚ましい成果を上げる例も出てきている。9社がモデル企業となり、現在も取り組みが進められているが、その大半が、当初の投資額は数十万から数百万円程度という。社運がかかるような投資額ではなく、失敗しても許容できる投資額だ。人員についても「ほとんどが専従の担当者が1人」だ。

2年で売上9000万円アップこれを体現した例として同氏が挙げるのが、茨城県水戸市の部品製造メーカー、ダイイチ・ファブ・テック(従業員27名、売上高3億円)だ。

同社は2016年に、設備稼働率データの見える化への取り組みを始めた。稼働率の変動が大きく、それにより受注量が制約を受けることが課題であり、稼働率を平準化することで受注上限を高めることが目的だったという。

茨城県工業技術センター(現:茨城県産業技術イノベーションセンター。2018年に名称変更)が行うIoT研修を利用して、社員がデータ収集に必要な技術を習得。約30台ある設備のうち、部品加工作業の最初の段階にある3台に、同センターから無償で借り受けたセンサー(80万円相当)を設置した。

こうして稼働率を見える化したうえで、毎朝の朝礼で前日の稼働率データを従業員に示し、仕掛品を1カ所に留めずに作業をするよう注意喚起した。稼働率が安定した結果、受注上限が上昇。2018年度の売上は約3割、9000万円増加した。

メソッド1「IoTで何をすればいいのか分かりません――まずは経営課題の把握を」で述べたように、①As is/To beが明確で、かつ②業務に活かしやすいデータを取得するところからスタートしたこと、そして③公的機関の支援をうまく活用したことが成功要因と言えるだろう。

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