R16の標準化作業と並行して2019年末に、R17で検討される主要項目がほぼ決定した。「R17は5Gの完全化」と話す千葉氏によれば、ポイントは次の3点になるという。
1つが、「自動化技術によるネットワークのシンプル化と拡張」だ。
R17では、AIや機械学習技術を使ってネットワーク運用を自動化するための機能が検討される。LTEでも採用されている、基地局等から収集したデータを分析してRAN/コアネットワークのリソース管理を最適化するSON(Self Organizing Networks)も含め、エンドツーエンドのネットワーク運用自動化を目指す。また、その一部として、ネットワークスライシングの自動設定や動的変更といった機能も検討される。
2つめは、「製造業や産業制御のネイティブサポート」だ。R16で規定されたURLLC/産業IoT関連、およびプライベートネットワーク機能の拡張が引き続き検討される。
3つめが「市場範囲の拡大」だ。主にIoT用途のユースケース拡大を目的に、より低消費電力かつ低コストな端末をサポートするための機能等を盛り込む。
LPWAとURLLCの中間規格図表4と5は、多岐にわたるR17の検討項目のうち、主要項目を用途/ユースケース別に整理したものだ。
図表4 3GPP Release17で検討される主要項目(1)(クリックして拡大)
図表5 3GPP Release17で検討される主要項目(2)
IoT関連での注目は「NR-Light」だ。「LTE-MやNB-IoTといったLPWAと5G URLLCの中間的なニーズに応える」(藤岡氏)新規格である。LPWAよりも広帯域な通信が可能で、例えば画像の送受信を行い、かつ遅延時間も抑えたいといったケースに対応する。
詳細はこれから議論されるが、一般的な5G端末に比べてアンテナ数を減らし、最小帯域幅やエネルギー消費量も低減したシンプルかつ低コストな端末の開発を可能にすることが、NR-Lightの目的だ。
このほか、R16で規定されたURLLC/産業IoT、プライベートネットワーク、ポジショニング、省電力化などの機能拡張も予定されている。
eMBB関連では、周波数帯の拡張とIABの機能拡張が大きなトピックだ。
現状の5G NRでは6GHz帯以下のFrequency Range1(FR1)と、24.25~52.6GHzのFR2(日本は28GHz帯)が使われているが、R17では71.0GHzまでターゲットを広げる。FR2と比べてもより広い帯域幅が使えるため、屋内や密集地での超高速・大容量通信への利用が想定されている。
また、「低遅延にも効く」と藤岡氏は指摘する。サブキャリアをより広く取れるためだ。
5G NRではサブキャリアの幅を大きくすることで、送信間隔を短くしながら多くのデータを伝送できるようにしている。この幅が、LTEの15kHzに対してFR2では最大120kHz、上記の拡張後は最大240kHzまで広がる。「LTEと比べて遅延が16分の1になるポテンシャルがある」(同氏)。
R16で規定されたIABも拡張する。安定性や周波数利用効率、遅延等の性能改善のほか、トポロジーやルーティングの柔軟性も向上させる。基地局間の接続を冗長化し、障害時等に切り替える機能が追加される予定で、より高信頼かつ効率的な無線バックホールが実現できる。