次世代ZETAが2021年にも 独自機能で“先行組”と差別化を図る

英ZiFiSense社のアンライセンス系LPWA規格ZETAは、2018年にサービスを開始した“後発組”だ。それゆえ、LoRaやSigfoxなどの“先行組”にはない機能で差別化を図ってきた。

最大の特徴が、センサーと基地局の間に中継器(Mote)を設置することで、最大4ホップまでのメッシュネットワークを構築可能なことだ。中継器は電池駆動のため電源の有無に関係なく自由に設置することができ、基地局を増設する場合と比べて設置コストは約1/10に抑えられる。この中継器を使って、通信がつながらないエリアに代替経路を確保したり、伝送距離を延ばすといったことが可能である。

この特徴を活かした用途として、主に3つの分野で活用が進んでいる。

1つめがスマート農業だ。一例として、NTTドコモの営農支援プラットフォーム「畑アシスト」がある。

畑アシストは、圃場に設置したセンサーから取得したデータをアクセスポイント(AP)経由でドコモのクラウドに収集、スマートフォンやPCなどから確認できるというものだ。センサーからAPまでの通信に、ZETAが用いられている(図表1)。

図表1 「畑アシスト」のイメージ

図表1 「畑アシスト」のイメージ

2019年の提供開始以来、スマート化を検討している中堅・中小規模の農業法人や新たに農業に参入する企業を中心に畑アシストの導入は進んできた。一定規模以上の耕地面積があって、多様なセンサーを取り扱ううえ、データの送信頻度は毎日5~30分に1回と比較的高い。「ZETAは最大600bpsとLPWAの中では通信速度が速く、1日当たりの通信回数も制限がないことから、他のLPWAと比較して1回当たりのデータサイズが大きいやり取りに適している」とドコモ スマートライフ推進部 フードテックビジネス担当 担当課長の大関優氏は説明する。

畑アシスト

NTTドコモの営農支援プラットフォーム「畑アシスト」は、
土耕だけでなく水耕栽培や水産にも対応する


2つめがスマートビルディングだ。東京建物は2020年9月より、「東京建物日本橋ビル」においてビル統合管理プラットフォーム「DBM(Dynamic Building Matrix)」を運用している。中継器を用いたマルチホップ通信は、電波の届きにくいビルの地下でも安定的に通信できるうえ、屋上から地下まで広範囲にネットワークを構築するのに適するという。

DBMは、業務管理システムや設備管理システムをZETAの管理プラットフォーム「ZETA Cloud Platform」と連携させることで、巡回点検や設備保守、清掃といったビル管理業務を1つのプラットフォームに統合し、業務フローをデジタル化することができる。

ビル管理業界では人材不足が深刻化していることから、東京建物では日本橋ビルの運用で得た知見やノウハウを基に、自社が所有・管理する他のビルについてもスマートビル化を進めようとしている。

そして3つめがスマート物流だ。ZETAの通信プロトコルの1つ「ZETA-Gプロトコル」を用いたICタグ「ZETag」は、約1~2㎞の長距離通信とボタン電池1個で約3万回の通信が特徴であり、在庫管理や物流拠点間も含めてエンド・ツー・エンドのトラッキングを可能にする。

半導体メーカーのソシオネクストは、CPUやメモリ、RF回路などを1チップ化したZETag用SoCの量産を2021年末にも開始する予定。すでに量産されている2チップ構成のZETag用LSIと比べて低廉化や小型化、低消費電力化を実現することができる。

これまで物流管理には主にICタグが用いられてきたが、通信距離やコストに課題があった。ZETA陣営では、SoCの量産化を機にZETagの採用を加速させたい考えだ。

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