ソフトバンクは2022年6月27日、LPガス業界のDX実現を目指し、3つのサービスをLPガス事業者向けに提供開始すると発表した。
3つのサービスとは、①AIがLPガス容器内の残量を予測して最適な配送計画・ルートを自動で策定する「Routify(ルーティファイ)」、②検針データや保安業務に必要なデータを一元管理できる「スマートメーターマネジメントシステム」、③LPガスの契約者にWeb明細やオンライン決済を提供する「Gascope(ガスコープ)」だ。
Routifyは、LPガス事業者が保有するデータ(検針データ、車両の数や種別、配送員数や物件情報のデータなど)と、道路情報や天候などの外部データを活用することで、AIがLPガス容器内の残量を予測し、予測に基づいて最適な配送計画・ルートを自動で策定するサービス。これまでLPガスの配送員は、勘や経験によって配送計画やルートを策定していたが、Routifyを導入することにより、自動で策定された配送先リストや配送ルートを配送員向けアプリ(ハンディーターミナルやスマートフォンに対応)で確認するだけで、最小限の移動で効率的に配送業務を行うことができ、ガス残量のばらつきが少ない状態で容器を回収することができる。
「Routify」のサービスイメージ |
なお、ソフトバンクはRoutifyのベースとなる配送最適化システムを開発し、2020年5月から国立大学法人九州大学と共同研究を行ってきた。研究の一環で実施した、実際の配送現場でのフィールドテストでは、ガス納入能力(配送員が1時間当たりに交換したガスの容量)が25%向上するなどの結果が出ている。フィールドテストに協力したアイエスジーでRoutifyの導入が決定しているほか、今後、土佐ガスが導入に向けて試用を開始する予定だ。
配送員向けアプリの画面イメージ |
スマートメーターマネジメントシステムは、LPガススマートメーターから取得した検針情報や設置先情報などのデータを一元管理し、LPガス事業者の検針業務や保安業務に活用可能なサービス。収集した検針データをWebブラウザで確認できるほか、警告などのアラーム情報をAPI連携した基幹システムや集中監視システムに通知したり、メーターの弁の開閉などの操作を遠隔で実施したりすることが可能だ。
「スマートメーターマネジメントシステム」のサービスイメージ |
LPガス事業者は、複数のメーカーのメーターを導入していることが多く、データ管理システムがメーターメーカーごとに異なっているため、運用の煩雑さやコストが課題となっていた。スマートメーターマネジメントシステムは、メーターメーカー各社の管理システムの基本的な機能を備えており、メーカーを問わず様々なスマートメーターのデータを連携させて一元管理することができる。また、ソフトバンクの通信ボードを内蔵したスマートメーターだけでなく、他社の通信回線を利用しているスマートメーターおよびクラウドセンターとも接続することを想定しているため、マルチメーカー・マルチネットワークで利用することが可能だ。
Gascopeは、LPガスの契約者にWeb明細やオンライン決済などを提供するサービス。LPガス事業者向けに、3つの機能をパッケージで提供する。
(1)Web明細
LPガスの契約者が、利用明細をPCやスマホからオンラインで確認できる機能。
(2)LINE公式アカウントとの連携
LPガスの契約者に、LINEを通して利用明細の確定通知や広告を配信する機能。
(3)オンライン決済
クレジットカードによるオンライン決済や、払込票によるコンビニエンスストアでの決済で、LPガスの利用料金の支払いができる機能。
「gascope」のサービスイメージ |
なお、今後はLINEを活用したサービスを拡充し、ガス設備の点検の訪問予約や、サービスの加入・退会、問い合わせ機能などを追加する予定。
ソフトバンクは、2019年5月から提供している「LPガススマートメーター向け通信ボード」や、新たに提供する3つのサービスを通して、LPガスの自動検針からデータ管理、配送の効率化、契約者への利用明細の通知までをワンストップで支援することで、LPガス業界のDXを推進する。また、Routifyによって配送を最適化して車両の稼働時間を減らすことでCO2の排出量を削減するとともに、安定したエネルギーの供給を支援し、SDGs(持続可能な開発目標)における目標11「住み続けられるまちづくりを」や、目標13「気候変動に具体的な対策を」などの達成を目指すとしている。