日本は「世界一眠らない国」と言われている。OECDが2021年に調査した結果によると、日本人の平均睡眠時間は7時間22分だという。これは加盟国の平均睡眠時間を1時間以上も下回る数値であるうえ、OECD加盟国の中で最も低い数値でもある。睡眠不足は仕事の創造性や生産性低下につながるだけでなく、ガン・脳卒中といった五大疾病の罹患リスクも高める。
このような危機的状況に対し、NTT西日本とパラマウントベッドの共同出資により2021年7月に設立されたNTT PARAVITAは2023年3月17日、新サービス「ねむりの応援団」を発表した。NTT PARAVITA マーケティング部 部長の猪原祥博氏は「眠りのDXカンパニーの私たちが日本の会社員を睡眠から元気にしていきたい」と意気込んだ。
ねむりの応援団はサブスクリプション型サービスとなっており、100名以上からの申し込み、かつ1年契約が条件という制約はあるが、後述する睡眠センサー・ルーター込みで1名あたり月額480円(税抜)で利用可能だ。
具体的なサービス内容は、3つある。1つ目は、「ねむりの授業」だ。年に4回実施される講座で、従業員は安眠のための正しい知識・スキルを身に着けることができるという。2つ目は、「ねむりの相談室」だ。睡眠に関する疑問点・悩みごとが発生した場合、従業員は電話・LINE・Zoomなどを通して、専属の睡眠改善インストラクターに相談できる仕組みだ。3つ目は、「ねむり改善プログラム」である。睡眠センサーによって日々の睡眠状況を可視化し、従業員自身の睡眠習慣の理解の一助となる。睡眠習慣に要改善事項が傾向として現れた場合、インストラクターによる伴走型サポートも実施する。
また、産業保健師などの企業担当者に対しては、従業員1人1人の秘匿性は守られる形で分析結果を送付する。猪原氏は、「企業に対して睡眠サービスを提供する企業はそう多くないのが現状だ。セミナーはあっても改善プログラムまで含めた睡眠について丸投げできるサービスを提供する企業は極めて少ないと思っている」と胸を張った。
ねむり改善プログラムで使用される睡眠センサーは、電源をオンにしてマットレスの下に入れるだけなので設置も容易だ。センサー自体は薄型で睡眠中も違和感がないという。Bluetoothでセンサーとルーターをつなぎ、センサーが読み取った心拍数・呼吸数などのデータは、ルーターを通してクラウド上にデータ保管される。従業員はこのデータをベースにインストラクターからアドバイスを受けることができる。
「既に睡眠に悩みを抱えている方々だけではなく、幅広くいろいろな方々に安価に使っていただきたい」とNTT PARAVITA 代表取締役社長の中野康司氏は語った。同社は、2023年度に大企業を中心に200社への導入を目指すという。その後、中小企業へと裾野を広げていく方針だ。