Wi-Fi HaLowは新ステージへ 850MHz帯獲得に前進

目次

Wi-Fi HaLowとは?

「Wi-Fi HaLowを知らないという人はほとんどいない。導入に関心がある人が見に来ている」

2024年5月29日から31日にかけて開催された「ワイヤレスジャパン×ワイヤレス・テクノロジー・パーク(WTP)2024」。この展示会に出展した、IEEE802.11ah(Wi-Fi HaLow)の普及に取り組む802.11ah推進協議会(AHPC) マーケティングTGメンバーの森田基康氏は、ブース来場者をこう分析した。

802.11ah推進協議会 マーケティングTGメンバー 森田基康氏

802.11ah推進協議会 マーケティングTGメンバー 森田基康氏

あらためて、Wi-Fi HaLowの特徴を確認しておこう。

920MHz帯を利用する免許不要の通信規格であり、従来のWi-Fiと比較して長い1km程度という伝送距離と、他のLPWAより高い、数Mbps程度のスループットを特徴とする(図表1)。LPWAでは難しかった画像や動画の伝送が可能なことに加え、国際的に標準化されたフルオープンなIPベースの規格であるため、Wi-Fiプロトコルに対応した既存のハードウェア/ソフトウェア資産を活用できる開発の容易さも強みだ。

図表1 プライベートワイヤレスの種類と特徴

図表1 プライベートワイヤレスの種類と特徴

日本国内では2022年9月に商用で利用可能になり、IoT向けの通信方式として導入が進む。

Wi-Fi HaLowのユースケース広げる対応機器

動画伝送が可能なことから、Wi-Fi HaLowのユースケースは、カメラを用いた河川などのインフラや防犯目的の監視が先行したが、さらに用途は広がりつつある。

後述するホームIoT向けのセンサー機器、流通・飲食業界向けのタブレット端末やレシートプリンターなど、ユニークな端末の開発も進んでいる。北米や台湾では、長距離伝送を活かし、車両間通信による安全運転支援や、信号機制御などのモビリティ分野でも活用されているという。

ゲートウェイ機器のラインナップも充実してきた。イーサネットやWi-Fiなどのインターフェースを持ち、これに接続することで既存のIPデバイスをWi-Fi HaLowに収容して運用できる。ゲートウェイを開発する各社は、機器制御などFA分野での既存ネットワークの置き換えをアピールする。

このような製品のバラエティを支えているのが、「チップベンダー2社の存在」とAHPC 運営委員の北條博史氏は説明する。

802.11ah推進協議会 運営委員 北條博史氏

802.11ah推進協議会 運営委員 北條博史氏

Wi-Fi HaLowのチップは、開発を先導してきた米NEWRACOMと、豪州に本拠を置くモースマイクロから供給されている。かつてはNEWRACOMの独占状態だったが、今年に入ってモースマイクロ製チップを採用した製品の登場が加速しているという。Wi-Fi HaLowはフルオープンな標準規格であることがチップ開発でも競争原理を働かせており、そのことが端末の開発を後押ししている。

デバイス開発をリードするのは台湾ベンダーだ。「チップ開発は米豪のベンダーだが、それをモジュール化し製品の形にするのは台湾が鍵を握っている」とAHPC 副会長の鷹取泰司氏は話す。

802.11ah推進協議会 副会長 鷹取泰司氏

802.11ah推進協議会 副会長 鷹取泰司氏

AHPCは台湾ベンダーの業界団体とアライアンスを組み、機器の多様化、ビジネスチャンス拡大に向けて連携を深めている。森田氏によれば、台湾ベンダーの日本市場への関心は高く、「実は台湾ではIoTがそれほど盛んではない。盛り上がっている日本市場に製品を供給し、日本の事例に学んで台湾でもWi-Fi HaLowを普及させたいと考えている」。製品ラインナップのさらなる充実に期待が持てそうだ。

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