携帯電話回線を使ってモノをインターネットに接続するセルラーIoTは、省電力・小容量と高速・大容量の2つの方向性がある。
前者はLPガスや都市ガス、電気、水道のメーターのスマート化、後者はクルマや建設機械、大型機械設備などのコネクテッド化が主なユースケースだ。
セルラーIoT市場は順調に拡大を続けており、例えばKDDIは、子会社のソラコムを含めたIoT回線数が累計で4000万回線を突破した(2023年6月末時点)。
「これまでデータを収集する基盤を広げてきたが、4000万回線を超えたことで新たなフェーズに入っている」とKDDI ソリューション事業本部 DX推進本部 DXサービス戦略部 部長の野口一宙氏は話す。
企業は従来、生産性向上をIoTの主な目的としていたが、最近はIoTにより製品の付加価値を高めたいと考える傾向にある。
一例が自動車などコンシューマー向け製品メーカーだ。こうした企業は製品を売ると、その後エンドユーザーとのタッチポイントを持たないが、スマートフォン向けのアプリを作って製品販売後も顧客接点を維持し、アプリで収集したデータを基にサービスを提供することで顧客満足度の向上を図ろうとしている。このため、集まったデータの分析やデータを活用したアプリケーション開発をKDDIがサポートする案件が増えているという。
KDDIは、2022年5月に中間持株会社KDDI Digital Divergence Holdingsを設立。KDDIアジャイル開発センターやアイレットなど開発を得意とする企業をその傘下に入れることで、上位レイヤーのシステム開発やアプリ開発の体制を強化してきた。背景には、IoTの進展による企業ニーズの変化もあるが、それだけではない。
「スマートメーターはビジネスの規模が大きいが、家電などその他のIoTは多くても数万台規模。回線だけを提供していてもなかなかビジネスとして成立しづらい。集まったデータを活用するためのシステムやアプリケーションにビジネスをシフトさせていこうとしている」とKDDI ソリューション事業本部 DX推進本部 DX・IoTソリューション部 部長の西山知宏氏は説明する。