音声通信が20年ぶり進化 Bluetoothの新規格「LE Audio」

オーディオ機器からケーブルを取りさらったという意味で、Bluetoothは音楽の楽しみ方を大きく変えたと言える。ヘッドホン/イヤホンもスピーカーも、今やワイヤレスは当たり前。テレワークでWeb会議が普及するなか、仕事でBluetoothヘッドセット/スピーカーフォンを利用する人も増えている。

ところが、規格そのものに目を向けると、約20年前の1999年にBluetoothが登場して以来、そのオーディオ仕様が大きくアップデートされることはなかった。2010年代の機能追加・拡張はもっぱらIoT向けのBluetooth Low Energy(Bluetooth LE)関連が占めている。

だが、2020年代は違う。新規格「LE Audio」が登場するからだ。

BLEで高品質オーディオをLE Audioとはどんな規格なのか。ソニー HE&Sプロダクツ事業本部 モバイルプロダクト事業部でワイヤレステクニカルマネージャーを務め、Bluetooth SIGでLE Audioの仕様化にも深く関わる関正彦氏は、Bluetooth Classic(Bluetooth LEに対して従来のBluetoothをこう呼ぶ)との違いを次のように語る。

ソニー HE&Sプロダクツ事業本部 モバイルプロダクト事業部 モバイル商品技術2部 パートナー技術課 ワイヤレステクニカルマネージャー 関正彦氏
ソニー HE&Sプロダクツ事業本部 モバイルプロダクト事業部 モバイル商品技術2部 パートナー技術課
ワイヤレステクニカルマネージャー 関正彦氏


「補聴器など、今までBluetoothが使われていなかったデバイスでも利用できるようになるほか、低遅延化・高音質化の点で大きく改善する。ブロードキャストの追加によって『オーディオシェアリング』という新たなユースケースも生まれる」

このLE Audioは、Bluetooth LEで低遅延かつ高音質なオーディオ伝送を可能にする規格だ。

Classicでは、A2DP(Advanced Audio Distribution Profile)という高品位ステレオ音声伝送用プロファイルを使っているが、LE Audioはそこから発展したものではなく、まったく新しい仕様となる。

20年も前に作られたA2DPの最大の課題は、時間同期の仕組みがないことだ。「遅延が大きく、画と音のズレなどが起こるが、LE Audioは伝送の仕方がそもそも違うので、音ズレが改善される」(関氏)。

LE Audioの低遅延化を可能にしたのが、2020年リリースのBluetooth 5.2で追加された「Isochronous(アイソクロナス:同時性)Channel」である。データ伝送のタイミングを同期させる機能だ。音声データを細かく分割し、送信元(PCやテレビ、スマホ等)と受信側(イヤホン等)で20ミリ秒程度の単位で時間同期しながらオーディオストリーミングデータを送る。同時性を最優先することで遅延量を削減する仕組みだ。

音声コーデックについても、A2DPの標準であるSBC(Sub Band Codec)とは異なる「LC3」を採用している。圧縮率がSBCの約2倍と高く、低いビットレートで高品質な音声が送れる。図表1は、SBCとLC3の音質を評価した結果で、5が最も音質が良い。LC3の場合は160kbpsでも、SBCの345kbpsと同程度の評価を得ている。帯域の節約、遅延量の減少にも貢献する。

図表1 SBCとLC3の比較

図表1 SBCとLC3の比較

LE Audioはもともと補聴器をターゲットに仕様化が始まった経緯があり、比較的低音質な用途から音楽リスニング用途まで幅広くカバーする。「Classicでは用途によってSBC以外にも複数のコーデックを使っていたが、LE AudioはLC3だけで多くのユースケースを満たせる」と関氏。SBCより高音質を求める声もあり、スマホやオーディオ機器のメーカーがaptXやLDACといった高音質コーデックを独自に実装しているものもある。LC3を標準とするLE Audio対応デバイスが広まれば、標準コーデックのみで対応できる幅が広がる。

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