野村総合研究所(以下、NRI)は2023年5月26日、日本のChatGPT利用動向に関する調査結果を発表した。
同調査は、2023年4月15日~16日にかけて、関東地方在住の15~69歳を対象にインターネットアンケート形式で行ったものだ。有効回答数は3204人。
それによると、調査時点でChatGPTを知っていると回答した人の比率は61.3%、実際に利用したことがあると答えた人は12.1%だった。性別では特に男性の比率が高く、認知率では男性の70.9%に対し女性は50.9%、利用率でも17.7%(男性)対6.2%(女性)と大きな差が見られた。年齢別にみると、10代~30代の男性の利用率が20%を超えていて最も高い。女性は20代が唯一10%以上の利用率となっていた。
次に、職業別の利用度合いは、学生が21.6%、教職員が20.5%と教育関係者の利用率が20%を超えて最も高くなっている。
大学では学生のChatGPT利用についてガイドラインを策定しており、例えば上智大学は、教員の許可なくAIが生成した文章や計算結果をレポート作成に使うことを禁じ、検出ツールで違反が確認された場合は厳罰に処すという通達を行った。世界的に見ても、英国のオックスフォード大学とケンブリッジ大学は、ともに評価につながるレポート作成や試験時の生成AI使用を禁じるなど、教育現場では生成AIとの付き合い方が喫緊の課題となっている。
教育関係者の次に利用率が高いのが会社役員で17.2%、以下、会社員16.7%、自営業14.5%と続く。企業の場合、生成AI利用による機密漏洩への懸念が強く、生成AIの利用ガイダンスを各企業が策定している段階だ。最も利用率が低いのはパート・アルバイト(2.4%)や専業主婦(4.1%)だが、医師・医療関係者も5.3%と低い。「人命と向き合う医療関係者からすれば、ChatGPTの回答内容の正確性に疑問がある中で、業務の一環として使う余地はまだかなり小さいということかもしれない」とNRIでは分析している。
アンケート調査では、今後の利用意向についても質問しているが、実際にChatGPTを使ったことがある人の88.7%が継続して利用したいと回答しており、1度でも利用すると、かなりの確率で継続利用したいと感じていることになる。
回答者のコメントを見ると、「面白い」「仕事が効率化できる」「仕事の時間が短縮できる」「生活が豊かになりそう」などに加えて、「コードの制作が楽になった」「HTMLやCSSの知識がなくてもコードを添削してWebページを作ることができた」「人に質問しづらいことがあってもAIには質問しやすい」といった具体的な体験やメリットを指摘する内容も見られた。
また、今後も使いたい理由として、「AIと話すのは人間と話しているより楽しい」といったものもあり、生成AIのさらなる進化により、人間同士のコミュニケーションの希薄化や、「AIとしか話さない人間」が増えていくような未来像も垣間見ることができるとしている。
一方、11.3%は利用したことはあるが今後は利用しないと回答しており、その理由として「必要を感じなかった」「思考が停止する」「使うのが難しかった」「怖い」といったコメントが見られた。
フランスのIPSOS社が2022年1月に発表したAI関連調査によると、「私はAIが何かについてよく理解している」という質問に「はい」と回答した人の比率が、日本は41%で調査対象28カ国中最も低かった。しかし、日本語をそれなりの質の高さで話すChatGPTの登場により、日本人がAIを実際に使う機会が格段に増えたことで日本人とAIの距離が一気に縮まり、「『習うより慣れろ』の精神で日本人のAI理解度(実際的な存在としてのAI理解)も大きく高まっているのではないか」とNRIでは結論付けている。