NTTドコモは2026年9月28日、分析・予測対象の過去データが不足する環境でも高精度に予測できるAI技術として、「Dual-view Adaptive Retrieval augmented Tweedie model(DART)手法」を確立したと発表した。
新規サービスを立ち上げる際や、既存サービスを異なる領域や地域へ展開した直後においては、AIの予測に必要な過去データが十分に蓄積されていないケースがある。そのため、AIによるレコメンド機能や広告の効果予測などが適切に機能しない「コールドスタート問題」が生じる。これにより、利用者の関心に合わせたお勧めや広告を提示できず、利用者の定着や事業の立ち上がりに時間を要する事例が発生していた。
同技術は、このコールドスタート問題を解決するために開発された新しいAI技術だ。主に2つの特徴により、従来のAIでは対応が難しいとされていたデータが極端に少ない状況でも高精度な予測を可能にするという。
1つめは、多様なデータ分布を柔軟に扱える「Tweedie分布」をAIの学習ルールに導入した点だ。従来のAIの学習ルールは、平均値の周辺にデータが集まることを前提とした「ガウス分布」が広く採用されていたが、SNS上の反応のようにピーク時と非ピーク時で値が大きく異なるデータやばらつきがあるデータなど、複雑な条件下においては、AI が十分に学習できないという課題があった。同技術では、そのような複雑な条件下でも柔軟に学習できるTweedie 分布を採用し、データに偏りがある状況でもより適切な学習と予測を実現した。

2つめは、予測対象に類似した他の事例である「近傍事例」の活用だ。予測対象の過去データが不足する場合でも、同じ地域の別の店舗や、類似するジャンルの別の商品などの近傍事例のデータから、場所・時間・属性といった共通する複数の特徴を自動で探して学習することで、高精度の予測を実現するという。
同技術の活用により、サービス提供者は自社サービスにおける利用者のデータが集まるのを待つことなく、サービス開始初日からAIによる高精度な予測やレコメンド機能を提供できるようになり、事業の早期立ち上げにつながる。例えば、屋外デジタル広告(DOOH)事業においては、都心の主要駅など人流が大きく変動する場所に新設したデジタルサイネージについて、広告がどのくらいの人に見られるか(インプレッション)を、過去データが少ない段階でも初日から高精度に予測できる。
これにより、インプレッション数に応じた広告枠の価格を早期に設定し、販売開始までの期間を短縮できるという。また、利用者はサービス利用開始時点から自身の興味関心に合ったコンテンツや情報を受け取りやすくなる。ドコモは、2026年度中に国内外のDOOH事業で同技術の実証実験を実施する予定だ。