2030年の実用化が見込まれている6G。昨年11月に開催されたITU(国際電気通信連合)の無線通信部門の総会である「ITU無線通信総会(RA-23)」では、6Gのフレームワーク勧告が承認された。これを受け、移動体通信の標準化団体3GPPも、6G技術仕様の策定に着手すると宣言した。
欧米や中韓などの主要各国は、以前より6G推進団体やプロジェクトを始動させてきたが、6Gの標準化が本格的にスタートした今、取り組みがもう一段踏み込んだものになるのは間違いないだろう。
米中対立が続くなか、米国政府が特に重視しているのは、特定ベンダーによらないオープンかつ透明性の高い6Gの実現である。
その背景には、国防という観点から6Gの重要性が増していることもある。マルチメディア振興センター ICTリサーチ&コンサルティング部 シニア・リサーチディレクターの飯塚留美氏は、米国の6G戦略について、「国防と民間が共用できる“デュアルユース”の仕組みを作っていこうというのが既定路線になりつつある」と解説する。
例えば米国議会は、国防予算の大枠を定める「2021年国防授権法」において、次世代ワイヤレス技術に関する部門横断チーム「5G and FutureG cross-functional team(CFT)」の設置を義務付けた。かつて多くの先端技術はまず軍事目的で開発され、その後民間に転用されていったが、もはやそうした時代ではない。最先端の民間技術を積極的に取り入れなければ、軍も優位性を保てない時代になってきている。
また、米国について、「コンシューマー向けのユースケースにも積極的に取り組んでいる」と指摘するのは、KDDI総合研究所 シンクタンク部門 海外市場・政策リサーチグループ コアリサーチャー 米国担当の吉田恵理子氏だ。
米国では、AppleやMicrosoftなどの企業から構成される「Next G Alliance」が代表的な6G推進団体として知られている。同団体は、優先研究項目やユースケースに関する白書も発行しており、スポーツドローンレースや没入型ゲーム・エンタメなどの「多感覚拡張現実」や、ユーザーの嗜好に合わせたサービスを提供する「パーソナライズユーザー体験」などを6Gのユースケースとして挙げている。