AIを後付けする“AI-Powered”のアプローチではなく、設計や標準化の段階からAIの活用を前提として作る——。
既存の機能を拡張するためにAIを付加的に搭載してきた5Gと、AI前提で標準化の議論が進む6Gとの違いについて、エリクソン・ジャパン CTOの鹿島毅氏はそう語る。これが、6Gが“AI-Native”とされる所以だ。

このAI-Nativeには2つの側面がある。6Gシステム全体にAIが組み込まれ、ネットワークの最適化などにその能力を使う「AI for Network」と、AIの普及と活用を支えるための要件を6Gネットワークに具備する「Network for AI」だ。前者については、「ネットワーク設計へAIを統合する」方向性で標準化、そして技術開発が進められている。
5GでもAI活用は進んでいるが、それは1つの機能ごとにAIを付加していくものだった。6Gでは、「パフォーマンスやエネルギー効率を最適化するために、AIを使う前提で設計する」と鹿島氏。クアルコムジャパン 標準化本部長の城田雅一氏によれば、「6Gでは、モビリティエンハンスメントやビームマネジメントといった無線のエッセンシャルな部分に、AIがネイティブに組み込まれる」。高度かつ複雑な計算を伴う無線設計にAIを活用することで、物理的限界に近い領域まで無線性能を引き出せる可能性があるという。

では、具体的にどんな使い方が検討されているのか、例を挙げていこう。
5G-Advancedには、高速移動中のハンドオーバー処理方法を再設計し、セル切り替え時の遅延を極小化するL1/ L2トリガーモビリティ(LTM)機能が加わった。6Gではこれを基盤技術として、ネットワーク内のAIがユーザーの移動を予測し、プロアクティブにLTMを実行することで、ハンドオーバー時の“セロ遅延”を実現しようとする技術開発が行われている。
AIとRAN処理のインフラ共有化を目指すAI-RAN Allianceでも、各種の取り組みが行われている。
AIを使った無線通信ソリューションを開発する米DeepSigは、基地局とデバイスを接続する通信チャネルの両端でAIが信号フォーマットを学習することで、両者の“対話”方法を刷新する技術を開発。信号のエンコード/デコードを最適に行う方法を基地局と端末が共同で学習し、オーバーヘッドを排除したり、サイト固有の環境への適応を目指す。エヌビディアのソリューションを使ったプラットフォーム上で行った実証では、同一周波数で最大2倍のスループットを記録したという。