2021年は、5Gを大きく飛躍させる新技術の導入が広がる。特に注目されるのが、「スタンドアロン(SA)」「ローバンドNR(New Radio)」「キャリアアグリゲーション(CA)」だ。
これらの技術は、先行して5Gを展開する米中や欧州ですでに導入されており、大規模展開を始めている国もある。そうした各国の現状を見ることで、日本の5Gが今後どう進化していくかが、かなり見えてくるはずだ。
上記の新技術について見る前に、加入者やトラフィックの伸びについて、日本と利用傾向が似ている韓国の状況を確認しておこう。
韓国の5G加入数は2020年9月末時点で800万人を突破した。これは全モバイル加入者の10%強に当たる。ただし、エリクソンの調査によれば同時点での5Gのトラフィックはモバイル全体の32%を占めるほど膨らんでいる。5G加入者あたりの月間データ使用量は27GBで、4Gの約2.5倍だ。
韓国が特徴的なのは、ミッドバンド(3.5GHz帯)のみで93%の人口カバレッジを実現していること。政府による実効速度調査では下り最大916Mbps、上りで最大87Mbpsを記録している。日本ではミリ波(28GHz)の展開も始まっているが、3.7/4.5GHz帯でも今後1Gbps程度まで高速化することが期待される。
SA化で何が変わる?さて、2021年における最大のイベントはSAの導入だが、実際のところ、SA化によって何が変わるのか。そのメリットをまとめたのが図表1だ。5Gのユースケースを広げ、ユーザーの体感品質向上に直結する点を挙げると次のようになる。
図表1 NSAとSAの比較
まず、無線区間からコアまでエンドツーエンドのネットワークスライスが、“1端末で複数”使えるようになる。もう1つ、5Gネットワークの機能を外部に公開する「NEF(Network Exposure Function)」機能により、外部アプリケーションから網機能を制御できるようになる点も重要だ。これを活かしたユースケースとして、エリクソンは次の例を紹介している。
ドローンのカメラで建造物の外観を撮影し、画像分析で劣化を診断するシーンにおいて、まず超低遅延・高信頼通信(URLLC)スライスを使ってドローンに作業計画を指示し、目的地までの運行を監視・制御する。到着したら高速大容量(eMBB)スライスに切り替え、高精細映像を管理者のモニターやAIに送信。帰途はまたURLLCを使う。スライスの切り替えやQoS変更等はNEFを介して、ドローン管理システム側から実行できる。
こうした産業用アプリだけでなく、一般的なスマホサービスにも恩恵がある。12月に開催されたエリクソン・フォーラム2020で「5Gネットワークの世界動向」と題した講演を行った同社 北東アジア担当の鹿島毅氏は、SA化は接続時の遅延短縮やスループット向上にもつながると話した。NSA(ノンスタンドアロン)では、まずLTEに接続してから5G NRでデータ送受信を行うが、「SAはその時間をかけず即座にデータを流せる」。また、通信は1つだけなので、「(端末の電力が必要な)セル端で上り速度が改善する」という。
このSAをすでに商用化しているのが米中で、産業ユースケースの開拓を後押しする要因にもなっている。なお、両国は次に述べるローバンド(既存LTE帯域)NRもすでに実用化し、大規模展開を始めている。