RedCapの目的は、LTE-MやNB-IoTといったLPWA規格と5G URLLC(超高信頼低遅延通信)の中間的なニーズを満たすことだ。エリクソン・ジャパン CTOの藤岡雅宣氏によれば、「LPWAよりもハイビットレートで遅延が小さく、電池もけっこう保つ」規格になる見込み。詳細な仕様はこれから検討されるが、通信速度は数Mbpsから100Mbps、遅延は数十~数百msで、かつIoT用途で不可欠な低消費電力化が図られる。
5Gの特性と比較すると、eMBB(超高速大容量通信)/URLLCとmMTC(多端末同時接続)の中間的な位置付けになる。RedCapがRelease 17仕様に盛り込まれるかは確定していないが、「注目度が高いので入ってくる可能性はある」(藤岡氏)。
シンプルな端末で5Gを使うRedCapの最大のメリットは、シンプルな構造のデバイスで5Gが使えるようになることだ。簡易かつ省エネな端末を使ってIoTを実現できる。
デバイスの複雑さを低減するため、RedCapではTX(送信)/RX(受信)アンテナ数を1~2本に削減。送信/受信側が交替でデータ伝送するハーフデュプレクス(半二重)方式を使う。
使用する帯域幅は10~20MHzが想定されている。20MHzの帯域幅があれば下り最大100Mbps、上り最大50Mbps程度が可能だ。使用周波数帯は、伝搬特性に優れるSub6帯がメインになるだろう。
消費電力を低減するための手法としては、セルラーLPWAでも使われているeDRX機能を活用する。いわゆる間欠受信の仕組みであり、基地局が待受状態の端末を呼び出すページング通信の間隔を伸ばすことで、スリープ状態を長時間維持する。
RedCapのユースケースとしては、ウェアラブル端末や、映像を用いる高度IoTが有望視されている。
図表 RedCapの特徴とユースケース例
上記のような特性は、小型軽量・低価格なウェアラブル端末の開発に適しており、1~2週間程度の充電間隔が許容されるシーンであれば、数十Mbpsの通信速度も可能になる。
それ以外にも、数Mbps以上の通信速度を必要とする多様なケースで利用できる。LTE Cat.1(最大速度:下り10Mbps/上り5Mbps)から、LTE Cat.3(下り100Mbps/上り50Mbps、2×2MIMO使用時)の範囲をカバーしながら、より低遅延な通信が要求される場面にも応用できる可能性がある。例えば、通信速度が数Mbpsで遅延が100ms以下、電池駆動で数年使える産業用センサーが実現可能。LTEと同程度のコストでモジュールが開発できれば、IoTの適用領域は大きく広がるはずだ。
電源供給が可能な監視カメラでも、帯域幅を目一杯使えば数十Mbpsの高速伝送も可能なため、高精細映像を使う用途にも適用できる。
このようにRedCapは、シンプルな5Gデバイスを使ってコスト効率の高いIoTソリューションを開発・提供するための道を拓く。標準化が順調に進めば、2024年頃には対応デバイスが市場に登場しそうだ。