エリクソンが年に2回発行している「エリクソンモビリティレポート」の最新版(2024年6月)が公開された。その大きなテーマの1つが、「5Gミッドバンド」の展開だ。
ミッドバンドとは6GHz以下の帯域を指す(日本では3.5GHz帯、4.5GHz帯が5Gに割り当てられている)。プラチナバンドと呼ばれる1GHz以下に比べて帯域幅が広く、高速な通信サービスが可能になることに加えて、ネットワーク容量にも厚みをもたせることができる。
この5Gミッドバンドの展開で先行しているのが中国、北米、そしてインドだ(上図表)。上図表の通り、この3つの地域は85%を超えるのに対して、世界平均は45%にとどまる。日本が属するアジア太平洋地域(インド・中国を除く)は20%に過ぎない。
エリクソンモビリティレポートについて解説したエリクソン・ジャパンCTOの鹿島毅氏は、「ミッドバンドにつながっている場合、非常に高いユーザー体験を提供できる」と、その重要性を強調。今後も急増するトラフィック需要に応えるため、さらに5Gの収益化に向けてもミッドバンドの整備を急ぐべきと指摘した。
まず、世界の5Gの状況を整理しておこう。
5Gの加入契約数は順調に伸びている。2024年第1四半期には1億6000万件増加し、17億件となった。
2029年には、モバイル加入契約数の過半数を占める56億件に到達する見込みだ。成長著しいインドでは、5G加入者数が2023年末の1億1900万件から、2029年末までに約8億4000万件に増加すると予想している。
同様に、堅調な伸びを見せているのがデータトラフィック量である。2023年3月末から2024年3月末にかけて25%も増加した。レポートでは、モバイルデータトラフィックが2029年末までに年平均約20%の成長率で増加すると予測。「2023年から約3倍に伸びる」(鹿島氏)ということだ。
また、モバイルネットワークで処理される全データのうち、5Gで処理されるのは2023年時点で約25%にとどまるが、この値は2029年末までに約75%に拡大すると見込んでいるという。