エリクソンは、世界に228ある5G商用ネットワークのうち過半数の134件に製品を提供している。ネットワーク設備のオープン化が進む中でもトップシェアを維持し、RAN(無線アクセスネットワーク)市場では、2017年の32%から2022年には39%へとシェアを高めている。
その日本法人が2022年11月14日、プライベートイベント「エリクソン・フォーラム2022」を開催した。報道機関向けの説明会に、エリクソン・ジャパンの社長を務めるルカ・オルシニ氏と野崎哲氏が登壇。日本の5Gが抱える課題と、その打開策について語った。なお、同社の社長は2人体制で、オルシニ氏がソフトバンク事業を、野崎氏が戦略事業を担当している。
エリクソン・ジャパンの通信事業者向け戦略について説明した野崎氏は、5Gのパフォーマンスを改善することを日本の喫緊の課題に挙げた。5Gエリアは拡大しているものの、「5Gのインパクトを残すようなユーザー体験には至っていない」と指摘した。
第三者機関のOpensignalの調査によれば、5Gが利用できる割合を示す「5G捕捉率」は東京都内でわずか7.3%。通信事業者が優先的にエリア対応しているはずの山手線内でも17%に留まる。
パフォーマンスも低調だ。Ooklaが提供するスピードテストの結果によると、日本の5Gパフォーマンスは165Mbpsと、「536Mbpsの韓国と比べると31%、中国・台湾と比べても半分しかない」(同氏)。
最大の理由は「Sub6の局数が少ない」点にあるという。2022年前半の時点で、5G基地局数は4G基地局の5分の1。Sub6帯(3.7GHz帯と4.5GHz帯。ミッドバンドとも呼ばれる)の局数は4G基地局数の9%に過ぎない。
野崎氏によれば、国内ではLTEで使っていた低周波数帯(ローバンド)を5Gに転用してエリアを拡大するケースが多く、「ミッドバンドが少ない」。ローバンドに比べると電波は飛びにくいが、広い帯域幅を使って高速通信が可能なこの帯域を十分に活かしきれていないことが、「5Gに接続しても、LTEとパフォーマンスが変わらない」理由だ。
人口当たり/国土面積当たりのSub6局数は、国土が圧倒的に広く10倍超の人口を抱える中国と同程度。韓国には大きく溝を空けられている(上図表の右上)。