情報通信研究機構(NICT)と製造業7社によって2017年に設立された「Flexible Factory Project(FFPJ)」は、IoT化が進む製造現場において、無線通信の不安定化を解消することを目的に発足した。複数の無線システム間で干渉を抑制するための調整を行い、通信品質を安定化させる「SRF無線プラットフォーム」の技術仕様を策定。2021年12月に、同仕様に準拠する無線機器の認証プログラムも開始している。
そのFFPJを母体に新たに立ち上げられたのが、「Flexible Society Project(FSPJ)」だ。プロジェクト名をFactryからSocietyへと変更したのは、製造業だけでなく、物流や医療・教育、社会インフラなど他分野にも対象を広げるためだ。社会全体を無線通信で支えることを目的に掲げている。
ワイヤレスジャパン×WTP 2023のFSPJブースでは、これまでの取り組みの成果を紹介。加えて、すでに商用化されているSRF無線プラットフォームの認証機器等を展示している。
SRF無線プラットフォームとは、異種/異ベンダーの無線通信システムが混在する環境において、システム間での調整を行うための技術仕様である。異なる規格・世代の無線システムを協調制御することで、干渉を抑制するのが目的だ。
その仕組みは、無線システムに対して制御ポリシーを提供する「Field Manager」、制御ポリシーに基づいて無線を自律制御する「SRF Gateway」「SRF Device」等で構成される。SRF Gateway/Deviceが収集する情報を基に、Field Managerがアプリケーションの要求品質を満たしつつ電波干渉を回避する。
現時点でのSRF無線プラットフォームの最新仕様はVer.2.0。前世代のVer.1.1との違いは、5G制御機能とマルチホップ機能を追加した点だ。
無線の状態に応じて5Gと、免許不要周波数帯のWi-Fiを切り替え、統合制御することで、無線周波数帯の有効利用と高信頼化を実現している。
マルチホップ機能は、SRF Gateway間の無線接続、あるいはSRF Device経由でのSRF Gateway接続を行う機能だ。無線通信のカバレッジ拡大を容易にした。
Ver1.1対応製品はすでに商用化されており、FSPJブースでは、モバイルテクノとNECの製品が展示されていた。
NECは製品のアップデートも計画。5Gや、6GHz帯を用いるWi-Fi 6E、920GHz帯を用いるWi-Fi Halowにも順次対応する予定という。
また、Ver1.1に準拠したソフトウェア製品のリリースも計画中だ。Linux PCへの導入が可能で、これを用いることで既存の機器をSRFに対応させることができる。