楽天モバイルは2023年8月1日、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」の一環で、汎用ハードウェアとクラウド技術を用いた完全仮想化「Stand Alone(SA)方式5Gモバイルネットワーク(5G SA)」無線アクセス装置を構築し、商用化に向けた各種研究を完了したと発表した。
仮想化技術を用いた無線アクセス装置を使って、5G SAの各種基本機能のエンドツーエンド接続試験を完了。これにより、無線アクセスからコアネットワークまで完全仮想化された5G SA上での通信を可能にした。商用展開時の運用効率向上のため、無線アクセスネットワークの構築から運用・保守までを自動化する仕組みも構築した。
これに加えて、NEDOの委託事業である「AIを用いた5Gスライスオーケストレーション高度化技術」と協調し、RANネットワークスライシングの機能も開発した。
その検証例として、NECの映像解析技術を搭載した侵入検知システムと、本研究で開発した5G SA上で動作するRANネットワークスライシング機能を連動するシステムを構築(下図表)。侵入検知時に、RANネットワークスライシング機能によって5G無線帯域をリアルタイムに拡張し、通常時より高画質かつ低遅延で映像監視を行うことが可能となり、本機能の有効性を確認した。
また、商用化に向けた機能拡張および性能向上にも取り組み、Distributed Unit(DU)およびRadio Unit(RU)のサポート数を拡張。仮想CU(Central Unit)1つ当たりのセル数を256セルまで拡張子、クラウドリソースを削減しつつ、従来型LTEネットワークに比べて3倍以上の接続端末数をサポートすることが可能になった。
これらの成果により、専用のハードウエアおよびソフトウエアを必要とする従来型のモバイルネットワークと比較して、設備投資(CAPEX)・運用コスト(OPEX)を30%以上削減できるという。
楽天モバイルは今後、本技術を商用の5G SAに導入。傘下の楽天シンフォニーを通じて、日本発かつ世界最先端の完全仮想化5G SAプラットホームの世界展開を加速するとしている。