5Gロボで安心まちづくり 加速する警備・見守りのAI化

スマートシティを支える基盤として、サイバーフィジカルシステム(CPS)を活用する取り組みが進んでいる。現実空間で起きた事象をセンサーデータとして収集し、仮想空間で分析、その結果を現実空間へフィードバックするCPSにおいて、5Gは2つの空間をリアルタイムにつなぐ役割が期待されている。

東急不動産とソフトバンクが国家戦略特区である竹芝エリアで構築を進める「Smart City Takeshiba」もその実践例の1つだ。

第1段階であるビルのスマート化の舞台となる「ポートシティ竹芝」は全館を5G化。1300以上のセンサーからデータを集め、カメラ画像から人の出入りや飲食店の混雑率を解析して来館予測をテナントに配信したり、トイレの空き状況やエレベーターの乗員率を可視化している。

その情報は来館者への割引情報・クーポンの配信、店探しや出社時の混雑回避に役立てられるほか、警備ロボットや清掃ロボットが人を避け、安全かつ効率的に運用するためにも用いられる。

第2段階ではターゲットを竹芝地区全体に拡大し、街中に設置したカメラ・センサーで人流を解析。交通状況や気象データと組み合わせて分析した結果を竹芝地区の住民や滞在者に提供し、より適切な行動選択をサポートする計画だ。

「周囲には住民の方がいて、学校や商業施設もある。自動運転車両も走る。ビルで今やっていることを、地区全体に広げていく」とソフトバンク 法人事業統括 法人プロダクト&事業戦略本部 デジタルオートメーション事業第2統括部 統括部長の梅村淳史氏。「様々な技術、ソリューションを組み合わせて実現していくなかで、その軸となる通信技術として5Gがどっしりと構えているイメージだ」と、5Gの位置付けを語る。

警備ロボットに5G搭載スマートビル/スマートシティ開発では街や施設ごとに異なる課題やニーズに応じて、様々な5Gのユースケースが検討されているが、やはり期待が大きいのは自律運行ロボット/車両との組み合わせだ。

5Gで警備ロボットの進化と適用先の拡大を目指すのがセコムだ。

警備ロボットの開発で約20年の歴史を持つ同社は、今年6月に、Wi-Fi/LTEとともに5G通信機能を搭載した新型セキュリティロボット「cocobo(ココボ)」の試験運用を始めた。2019年から成田空港などで稼働している「セコムロボット X2」の後継として2021年内の発売を予定する。企画部担当部長の長谷川精也氏は、「人の集まる場所での警備の要望が増えてきた。オフィスビルや商業施設でも警備員の増員や、迅速に不審者を見つけたいといったニーズが高まっている」とcocobo開発の背景を語る。

セコム 企画部 担当部長 博士(工学) 長谷川精也氏
セコム 企画部 担当部長 博士(工学) 長谷川精也氏

cocoboは3D LiDARセンサーや、360度をカバーする複数のカメラを駆使して人や障害物を避けて自律走行しながら巡回警備を行い、搭載カメラの画像を解析して不審者・物、人の滞留や転倒などを検知する。そのほか異常音やガス漏れ、火災の検知、アームによるドアの施錠確認やゴミ箱内の熱源検知も可能と、巡回警備員の多くの業務を引き受ける。5cmまでの段差も走行でき、屋外使用も可能だ。

cocobo

cocoboのアームにハンド型アタッチメントを取り付け、施錠確認を行う際のイメージ(セコム発表資料より)。アームを自在に動かして、ベンチの下や自動販売機の奥側、底面など様々な場所の点検が可能だ

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