2020年11月6日、東京都庁第一本庁舎1・2階の公共スペースで5Gサービスが利用可能となった。
同日開催された、東京都と通信キャリアのトップが一堂に会する「第2回 TOKYO Data Highwayサミット」の冒頭、小池百合子都知事は「1年前の第1回会合のときは何もなかったのが、都庁本庁舎で5Gがつながるようになったのは大きな進歩」とアピールした。
このニュースは、5Gネットワークの早期構築を進める東京都が庁舎内をいち早く5Gエリア化したという点だけでなく、国内初となる屋内5G共用アンテナを用いて環境を整備したことでも大きな注目を集めた。
長年、通信キャリア各社は料金や端末、エリアをめぐって激しい競争を繰り広げてきた。だが5Gでは、共用アンテナに代表される「インフラシェアリング」がエリア展開におけるキーワードとなっている。
シェアリングを推進する総務省ライバル間で設備を共用するようになった最大の理由が、周波数特性だ。
5Gで使われる3.7/4.5GHz帯および28GHz帯はいずれも、これまで携帯電話で主に使われてきたより低い周波数と比べて、直進性が高く電波が飛びにくい。このため、4G以上に多くのアンテナを設置してカバーする必要がある。
しかし、すでに4Gアンテナを設置済みの建物が多い都市部では、新たな設置場所を数多く確保することは容易ではない。一方、過疎地やへき地、離島などの場合、設置場所はあっても、今度は採算を確保するのが容易ではない。
これらエリア展開にまつわる課題の解決策として、5Gではインフラシェアリングが重要な意味を持つようになっている。
総務省も後押しする。5Gを地方創生の起爆剤としたい総務省は、全国くまなく5G環境を早期に構築するため、2018年12月に「移動通信分野におけるインフラシェアリングに係る電気通信事業法及び電波法の適用関係に関するガイドライン」を公表。その後も2020年6月の「Beyond 5G推進戦略」や同年10月の「モバイル市場の公正な競争環境に向けたアクション・プラン」など、機会あるごとにインフラシェアリングを推進する方針を明らかにしてきた。
「場所や機器をできるだけ共有することで下がったコストを他の基地局整備への投資に振り向けてもらいたい」と総務省 電波部 移動通信課 課長補佐の宇仁伸吾氏は話す。
特に過疎地など地理的に不利な条件の地域については、5G基地局を複数社が共同で整備する場合、1社で整備する場合よりも高い補助率を適用する施策を導入し、インフラシェアリングによる5G普及を促進しようとしている。