「緊急通報に呼び返しは不可欠」警察庁らが事業者間ローミング検討会で訴え

総務省は2022年10月25日、「非常時における事業者間ローミング等に関する検討会」第3回会合を開催した。

今回の主要テーマの1つが、事業者間ローミング実施時の緊急通報についてだ。

今年7月に発生したKDDIの通信障害では、緊急通報に少なからず影響を及ぼしたことが警察庁、消防庁、海上保安庁からの報告で明らかになった。

それによると、7月2日・3日の2日間、KDDI携帯電話からの110番通報は前週と比べて約45%減少する一方、他の事業者の携帯電話からの通報は約7%増加。全体的には約4%減少した。

110番緊急通報の流れ     110番緊急通報の流れ

また、7月2日のKDDI携帯電話からの119番通報は、平時と比べて約63%減少したのに対し、KDDI以外の携帯電話や携帯電話以外からの通報件数はいずれも20%以上増加。通報件数全体に占めるKDDI携帯電話の割合は、平時と比較して約1/3に縮小した。

KDDIの通信障害の発生前後における119番通報件数の変化

KDDIの通信障害の発生前後における119番通報件数の変化

海上保安庁によると、通信障害の発生により、KDDIの携帯電話を使っているプレジャーボートからの緊急通報がつながらなくなったため、付近の船舶から代理通報したり、近くにいた漁師から携帯電話を借りて通報するなどの事例があったという。同庁の担当者は「船舶では携帯電話が唯一の通信手段であり、迅速な救助に不可欠となっている」と指摘した。

 

海上保安庁の緊急通報受理体制
 海上保安庁の緊急通報受理体制

警察庁、消防庁、海上保安庁が揃って強調したのが、緊急通報をかけてきた人との通話が切れた場合、緊急機関側から折り返し電話をかけられる「呼び返し機能」の重要性だ。

「非常時における事業者間ローミングは、通信障害が生じていないときと同様の環境下で国民が緊急通報できる方法で実現されるべき。通報場所や被害状況を把握するために呼び返し機能も必要」(警察庁)、「通常であれば部隊が現場到着までの間、通報者に連絡し、応急手当や初期消火などの指導を行うことがある。呼び返しができないと、このような対応ができなくなる」(消防庁)、「海上で起こる事件・事故は時間の経過とともに通報時と状況が変わっていくことが多く、呼び返しが行えない場合、時宜を得た状況確認や助言等が行えず、被害が拡大する恐れがある」(海上保安庁)など、それぞれの立場から呼び返し機能が不可欠であることを説明した。

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