ローカル5G合同検証会の第2回が開催、15団体・企業がアプリ・エリア設計をテスト

ローカル5G普及研究会はNPO法人ブロードバンド・アソシエーションの研究会として、2020年3月に発足した。コロナ禍がやや落ち着きを見せた2022年7月19日に、会員5社による合同検証会を初開催。3種類のローカル5G基地局と6種類の端末を使って相互接続性の検証を行った(参考記事)。

それから約9カ月。第2回の合同検証会は、普及研究会の委員長を務める東京大学大学院 工学系研究科 中尾彰宏教授の研究室(東京大学 本郷キャンパス 工学部3号館 NakaoLab)で実施した。参加したのは東京大学と、NTT東日本、NEC、NECネッツエスアイ、フレアシステムズ、iD、ブロードバンドタワー、東芝インフラシステムズ、日本アンテナ、OCC、トレンドマイクロ、電気興業、東陽テクニカ、エイビット、デロイトトーマツサイバーの14社。前回から規模を大きく拡大した。

東京大学大学院教授で、ローカル5G普及研究会 委員長の中尾彰宏氏

ローカル5G普及研究会 委員長を務める東京大学大学院工学系研究科 教授の中尾彰宏氏

検証内容も深みを増した。会員各社が製品を持ち寄り、「アプリケーション検証」「ネットワークエリア設計・構築」の2つのカテゴリーに分けて計6つの検証を行った。

ローカル5G合同検証会の目的は、現在は単一ベンダーで構成されることの多いローカル5Gシステムをマルチベンダー環境で構築・運用できるようにして普及を推し進めることにある。第1回では会員各社が5Gコアネットワーク(5GC)、基地局、端末等を持ち寄って相互接続性を確認。今回も同様の接続検証を実施しつつ、ローカル5Gシステム上で稼働するアプリケーションや電波測定・エリア設計ツール、セキュリティ対策用のソフトウェアも加わり、会場はさながらローカル5G関連製品の展示会のような様相を呈した。

15会員が参加した第2回の成果について委員長の中尾氏は、「前回と比べて、(どの製品も)すぐに動かすことができる。技術として進化している印象を持った」と総括。多くのベンダーが一堂に会して「実際に手を動かしながら、みんなでローカル5Gを動かしていく会を目指す。今後はアプリケーションの検証もどんどん推し進めていきたい」と展望した。

スマホ内線とビデオ付きトランシーバーを稼働

「アプリケーション検証」は、下図表の3つのシナリオを実施した。

図表1 アプリケーション検証のシナリオ

アプリケーション検証のシナリオ

1つめは、ローカル5Gを使った音声ネットワーク環境の構築だ。フレアシステムズの5GC一体型基地局とNECネッツエスアイのSIPサーバーを連携し、スマートフォンで内線通話ができる環境を構築した(下写真の左)。

ローカル5GとSIPサーバーの連携デモ(左)、右はスマホ用トランシーバーアプリ

ローカル5GとSIPサーバーの連携デモ(左)、右はスマホ用トランシーバーアプリ(映像は合同検証会の様子)

ローカル5Gは高精細映像の伝送をはじめ高速大容量通信の特性を活かした用途が注目されるが、ビジネス現場で用いる際には音声通話によるコミュニケーションの併用も期待される。例えば、工事現場等の監視映像を伝送するような場合でも、監視現場と遠隔地の管理者がローカル5Gで伝送した映像を共有しながら内線電話で意思疎通を行うといったユースケースだ。

今回の検証では、NEC製SIPサーバーを介した内線通話をテストした。高品質な通話が可能で、フレアシステムズ 代表取締役の中川貴之氏は「体感ではあるが、Wi-Fiよりも品質がよく低遅延だった。機械で測定した定量的なデータも取れたので、これを参考に我々のシステムもより改善していきたい」と話した。

また、同じローカル5Gシステムを用いて、NECネッツエスアイが提供しているスマートフォン向けトランシーバーアプリ「スカイトランシーバー プラス」の動作も検証した(上写真の右)。プッシュツートークのほかビデオ通話も可能なアプリであり、これもローカル5Gと組み合わせて様々なビジネス現場での活用が期待できる。

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