アフリカに電気と通信を届けることで持続可能な発展をもたらし、さらにそれをビジネスとして実現しようとするプロジェクトがある。シュークルキューブジャポンが手掛ける「TUMIQUI Project(ツミキプロジェクト)」だ。なぜアフリカに電気と通信を届けるのか、ともすれば慈善活動になりがちなこうした活動を、どうビジネスとして成功させていくのだろうか。
暗闇での出産で母子に危険がシュークルキューブジャポン 代表取締役社長の佐藤弘一氏は、NTTヨーロッパを経て2008年にフランスで起業、長年ICT事業に携わってきた。
5年前、仕事でアフリカにある国際協力機構(JICA)の事務所を訪問した。「アフリカの面白さに触れ、同時にインターネットの遅さと電気が無い状況を体験した。以来、ICTの力で、アフリカの課題解決ができないかと考えていた」(佐藤氏)
2019年1月、JICAの「途上国の課題解決型ビジネス(SDGsビジネス)調査」に参加。実際にウガンダとセネガルの病院を訪れ、停電の多さや、未電化エリアの診療所の困難を知る。「特に夜中や早朝の出産が大変だと言っていた。暗闇の中、医師が懐中電灯を口にくわえながら出産を手伝うため母子が亡くなることもあると聞き、頭を殴られた思いだった」
シュークルキューブジャポン 代表取締役社長 佐藤弘一氏
ツミキがもたらすものこの経験がきっかけとなり、新事業としてアフリカに電気と通信を届けることを決めた。そして蓄発電システムとWi-Fi機能をワンキット化した「TUMIQUI Smart Kit(以下、ツミキスマートキット)」を開発。持ち運び可能なサイズで、折り畳み式のソーラーパネルから発電し、電球に明かりをともすだけでなくスマホやノートPCの充電もできる。「誰でも扱えるようにシンプルな作りにした。Wi-Fiもパスワードを入力するだけで簡単に使える。電気だけを提供するプロジェクトは山ほどあるが、どれも通信という視点が欠けている」
同年5月、セネガルの保健省とMOU(覚書)を締結し、10台のツミキスマートキットを導入、診療所で実証運用した。未電化エリアでは1つの診療所で周囲に住む数千人から数万人を診ているケースも多く、9台のツミキスマートキットによって、約8万人が電気のある状態で治療を受けられているという。
画像提供:シュークルキューブジャポン
また、こんな効果もあった。「セネガルでは健康保険システムの電子化によって、患者のデータ入力が必要になった。ある村の看護師は月に一度、30km先の大きな病院に入力しに行っていた。ガソリン代もかかるうえ、その間は診療ができない。ツミキスマートキットが導入されたことで、PCでインターネットが使えるようになり、この問題が解決された」
こうした結果が評価され、さらにセネガル国内の経済特区ともMOUを締結し、今年1月に現地法人 TUMIQUI JAPON SASUを設立した。