Starlinkの法人導入始まる KDDI・楽天モバイルが描く衛星通信の未来

2022年は衛星通信がぐっと身近になった年であった。KDDIは2022年12月1日、「Starlink」を基地局のバックホール回線として利用し始めたと発表した。

Starlinkはイーロン・マスク氏がCEOを務めるスペースX社が打ち上げた低軌道衛星を利用した通信サービスだ。衛星通信というと、従来は、地上から約3万6000㎞もの高さにある静止軌道衛星を用いたサービスが主流だった。それに対し、「低軌道衛星であるStarlinkの場合、地上から550㎞の高さ。今年10月時点で3400機の衛星で全世界をカバーする」とKDDIの泉川晴紀氏は紹介する。地表に近く、衛星の数も多いため、これまでの衛星通信サービスと比較すると、大幅な低遅延化と高速大容量化を実現できる。

KDDI 事業創造本部 LX基盤推進部 部長 泉川晴紀氏

KDDI 事業創造本部 LX基盤推進部 部長 泉川晴紀氏

Starlinkは個人向けは自社で展開しているが、KDDIも国内で法人・自治体向けにインテグレーターとして提供する。現地での導入支援や構内LANの構築、他サービスとの組み合わせなどのサポートと合わせて提供予定だ。さらにKDDIでは、「Satellite Mobile Link」というサービス名で、Starlinkをバックホール回線に利用する基地局によるauエリア構築ソリューションの提供も開始した。

Satellite Mobile Linkのアンテナ敷設の様子(出典:KDDI プレスリリース)

Satellite Mobile Linkのアンテナ敷設の様子(出典:KDDI プレスリリース)

サービスの開始から間もないが、すでに導入事例も生まれている。清水建設は、12月19日から工事現場である北海道新幹線、渡島トンネル(上二股)工区(鉄道・運輸機構発注)でSatellite Mobile Linkの利用を開始するという。

北海道新幹線 渡島トンネル(上二股)工区工事現場の様子(出典:KDDI プレスリリース)

北海道新幹線 渡島トンネル(上二股)工区工事現場の様子(出典:KDDI プレスリリース)

一般的に山間部の建設現場に、通信環境を整備するのには困難を伴う。携帯電話や光ファイバーサービスのエリア外であることが多いためだ。渡島トンネル工区でも通信できないエリアがあった。「現場では業務用端末による通信だけでなく、119などの緊急通報や、従業員及び関係会社の人員も家族と通話したいなどの需要があった」と泉川氏は話す。

加えて近年は映像伝送の需要もある。「ネットワークがあることで、カメラを使って本社などリモートから現場の様子確認や、侵入者検知が行える。ペーパーレス化もネットワークがあってこそだ」と泉川氏は語る。

衛星通信の強みはカバーエリアだ。本来なら光ファイバーを巡らせ基地局を展開しなければ広げられない携帯電話のエリアを、上空基地局から広げられるため、これまでキャリアが展開できなかった山間部や離島などもエリア化できる。

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