――クリスさんはIOWN Global Forumのボードメンバーを務めています。Red HatはIOWNの技術開発にどのような形で貢献しているのですか。
ライト IOWNでは、大容量かつ超低遅延なオールフォトニクス・ネットワーク(APN)で複数のデータセンター(DC)拠点を相互接続し、各拠点のリソースを組み合わせて1つの大きなコンピューティングインフラとして使う新しいアーキテクチャを実現しようとしています。「コンポーザブル(組み合わせ可能な)ディスアグリゲーションインフラ(CDI)」と呼ぶこの仕組みをソフトウェアプラットフォームで支えるのがRed Hatの役割です。
このCDIは、現在のインフラとはまったく異なるコンセプトです。
今のサーバーは、1台ごとにCPUとメモリ、GPU、ストレージが入っています。ワークロードに必要な性能から逆算してサーバーに搭載するリソースの量を決めるので、各サーバーは必要以上のリソースを抱え込むことになります。
対して、我々が実現しようとしているCDIはCPUやメモリ、GPU等のコンポーネントごとにリソースプールを作り、ワークロードに応じて必要な分のリソースを組み合わせて使うというものです。各リソースをAPNで接続し、ワークロードごとに必要な分だけを割り当てられれば、CDI全体でリソースの利用効率を最適化したり、消費電力を削減できる可能性があります。
APNの能力を活かせば、分散配備されたリソースを、遅延を心配することなく組み合わせることができます。したがって、膨大な電力を消費するGPUリソースを適切な電源、例えば再生可能エネルギーが使えるDCへ移動させることもできるでしょう。
――Red Hatが提供するプラットフォームとはどのようなものですか。
ライト コンテナプラットフォーム「Red Hat OpenShift」で、最適なリソースで実行できるようにワークロードを割り当てます。
今年、このCDIの実現につながる実証をNTT、エヌビディア、富士通と行いました。カメラ映像を、100km程度離れた郊外DCに配備されたGPUでAI分析するというものです。超低遅延でロスレスなAPN上で、CPUやOSを経由せずデータを転送するRDMA(Remote Direct Memory Access)を使い、カメラ映像を郊外DCのGPUメモリに直接転送することで、リアルタイムにAI分析ができることを確認しました(図表)。
――一般的なクラウドDCに映像を送って分析するのとは異なり、これなら、現地にGPUがなくてもリアルタイム性の高いAI映像分析ができますね。
ライト この実証では、カメラ設置拠点にGPUを配備して分析するのと比べて消費電力を最大で40%削減できました。より多くの拠点・カメラを収容すれば、さらに大きな集約効果が見込めます。