三菱商事とNTTがDX新会社 まずローソンなど食品産業を変革

三菱商事とNTTは2021年3月23日、新会社を共同設立すると発表した。デジタルトランスフォーメーション(DX)サービスを提供する「株式会社インダストリー・ワン」で、三菱商事が51%、NTTが49%出資する。資本金は9億円。

三菱商事とNTTは、2019年12月に産業DX推進に関して業務提携していたが、「ただ単純に共同でソリューションを提供していくというより、もっと事業にコミットしていきたい、もっとリスクをシェアしていきたい、という思いが非常に強くなった」。新会社の代表に就任する三菱商事の芹澤亮氏は共同出資会社の設立について、このように説明した。

その背景には、日本全国の幅広い産業でDXの機運は高まっているものの、「戦略や企画はできていても、実行ができていない」(芹澤氏)現状があるという。日本の産業は複雑なバリューチェーンで構成され、個々の企業だけでは解決できない課題が多いことが一因だ。

そこで共同で新会社を設立し、産業全体のDXにさらに力を注げる体制を作った。

三菱商事の芹澤亮氏(左)とNTTの爪長美菜子氏
三菱商事の芹澤亮氏(左)とNTTの爪長美菜子氏

5Gによる産業DXも今後展開最初に取り組むのが食品流通分野のDXだ。食品卸の在庫最適化ソリューションの開発を進めてきており、2021年度より三菱食品が運営するローソン向け物流センターに提供する。

過去の出荷量や小売店舗の販売データ、天候データを基に、AIが需要予測を行い、最適な発注量を算出する。実証実験では平均で約3割、一部カテゴリでは最大4割の在庫削減を実現しながら、それとトレードオフの関係にある欠品率も総じて低下させることに成功したという。

「特に新商品で大きな効果を出した。類似商品の学習データを使って予測している」(芹澤氏)

三菱商事は食品流通分野のDX推進に向けて、POSレジで高いシェアを持つ東芝テック、食品卸向け基幹システムで高いシェアを持つ富士通などともパートナーシップを結んだ。

食品流通以外の産業での取り組みも始まっている。「具体的な産業名はまだ差し控えたいが、まずは食品流通と同じようにサプライチェーンが長い産業に同様のソリューションを展開していきたい」と芹澤氏は話した。

NTTグループは、今回の食品卸の在庫最適化ソリューションで、NTTデータの連携基盤を提供している。「今後も必要に応じて、(NTTグループの)事業会社から貢献できるものを提供していく。5Gも徐々に本番になっていくので、5Gの展開も考えていきたい」とNTT 新ビジネス室 担当部長の爪長美菜子氏は語った。

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