スポーツにローカル5G活用 兵庫県が新たな指導・観戦スタイルを検証

コロナ禍では感染拡大防止策として「密」を避けなければならないが、特に多大な影響を受けている分野の1つがスポーツだ。

この2年間、プロはもちろんのこと、学校の部活などアマチュアでも多くの競技で試合が中止になったり、無観客での実施を余儀なくされた。また、選手とコーチが接触すると感染リスクが高まるため、従来の指導スタイルも見直さざるをえなくなっている。

そうした中で、兵庫県は昨年6月、ローカル5GをはじめとするICT技術の活用により、スポーツが直面している課題を解決し、イノベーションをもたらすための実証実験を開始した。

兵庫県は東京都、徳島県に次いで自治体としては3番目となるローカル5G無線局免許を取得している。実証実験に際し、会場となっている県立三木総合防災公園内の屋内テニス場「ブルボンビーンズドーム」と陸上競技場にそれぞれRU(Radio Unit)1台を設置し、4.7GHz帯SA構成によるローカル5G環境を構築した。

4K映像を大量に収集実証実験は、「アスリート指導支援システム」と「新たな観戦システム」という2つのテーマで計10件が実施され、このうち3件にはローカル5Gが用いられている。

ローカル5Gを活用した実証実験の1つが、「リアルタイムデータ収集による遠隔コーチング」だ。

ブルボンビーンズドームでプレーするテニス選手のフォームを撮影した4K対応カメラ映像や、選手が身に着けたウェアラブルデバイスから得られる歩数などのデータを離れた場所にいるコーチに伝送。それらの情報を基に遠隔指導をするというものだ。

運動量データはLTE、データ容量の大きい4K映像についてはローカル5Gを使って送信したが、「タイムラグが発生することなく、映像をリアルタイムに確認することができた」と兵庫県 企画県民部 科学情報局 情報政策課 情報専門官の日坂英則氏は話す。

兵庫県 企画県民部 科学情報局 情報政策課 情報専門官 日坂英則氏
兵庫県 企画県民部 科学情報局 情報政策課 情報専門官 日坂英則氏

兵庫県内の中学校・高校の運動部では、マネージャーがスマートフォンやタブレットで試合や練習風景を撮影し、SNSにアップロードしたものをメンバーが共有。自宅に帰ってからスマホなどで映像を確認し、「振り返り」に活用していることが多い。

試合や練習の動画をリアルタイムに共有する方法には、SNSのテレビ電話機能があるが、画質が粗く細部まで確認しづらいため、遠隔指導に使うことは難しい。

これに対し、ローカル5Gを用いた実証実験では、参加者から「離れた場所でも高精細映像を見ることができ、リアルタイムな遠隔コーチングに十分活用可能」との評価が得られたという。

スポーツデータ統合システム「TUNEGRID」

プレー中のフォームを撮影した映像や運動量データを基に遠隔から指導を行う(写真はスポーツデータ統合システム「TUNEGRID」)

AIを活用したコーチングの高度化に関する実証実験にもローカル5Gが使われている。

プレーの様子を撮影した動画から、人間の動作の基本である骨格を基にAIでフォーム解析を行い、改善ポイントをフィードバックする。映像データがクラウド上に蓄積されることで、成長を「見える化」することも可能だ。

「AIによる解析にはビッグデータが必要になるが、ローカル5Gであれば4K映像を次々に読み込めるので、データを確実に収集することができる」と日坂氏は述べる。

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