商用化からまもなく5年を迎え、普及期に入りつつあると言われるローカル5G。10月30日に東京・御茶ノ水ソラシティカンファレンスセンターで開催された「ローカル5Gサミット 2024」は、そのローカル5Gの実導入に関心を持つ多くの人が詰めかけ、2019年に開始した同イベントにおける過去最大級の動員を記録。普及期の到来を裏付けた。
同イベントでは6つの講演が開催され、いずれも立ち見客が出る盛況。13ブースの製品展示も終日賑わいを見せた。
基調講演には、ローカル5Gの第一人者である東京大学大学院 工学系研究科 教授の中尾彰宏氏が登壇。「ローカル5Gが創出する価値の普及に向けて」と題して講演した。
中尾氏は、ローカル5G制度の整備が「グローバルで日本が突出していることには非常に大きな意味がある」と話した。中尾氏は、ローカル5Gによる課題解決を通じて生まれた仕様が「ローカル6G」を経て、6Gの共通仕様になるという未来図を描く。「現場発の仕様が革新を起こす」(中尾氏)。つまり、日本がローカル5Gの一層の普及と、それを後押しする制度改革に取り組み、ローカル5Gの先進的事例を積み重ねることができれば、6G時代をリードしていける可能性があるということだ。
講演では、富士山5合目での実証実験やローカル5G合同検証会、超小型SDR(ソフトウェア無線)ボードの開発など、中尾研究室が携わる多岐にわたる取り組みを紹介。そして、今後さらにローカル5Gが普及するには、「健全な市場形成が必要」と語った。各ベンダーが競争を行うのと同時に、「ユーザーが(採用した)ローカル5G製品の良さを語ることが、マーケットの拡大につながっていくのではないか」と参加者に呼びかけた。
また、スリーダブリュー Chief Evangelist 兼 CEOの植田敦氏は、オールインワン型のローカル5G基地局の新製品を講演で紹介した。バックホールはStarlinkに対応し、バッテリー駆動も可能なため「プラグアンドプレイでローカル5Gが使える」。業界最安値レベルの600万円以下という低価格も特徴の1つだ。
展示会場では13ブースで各社がローカル5Gソリューションを紹介し、参加者は説明に聞き入っていた。
avatarinとキャンパスクリエイトの合同ブースでは、ローカル5Gと組み合わせて円滑な遠隔接客を実現するコミュニケーションAIロボット「newme」のデモを展示。来場者はロボットを介したコミュニケーションを楽しんでいた。
NECネッツエスアイはオールインワンコア一体型ローカル5Gシステム「HYPERNOVA」を展示。トランクケースに収納して持ち運べるコンパクトな筐体が注目を集めた。
ローカル5Gサミット 2024の全講演は、11月13日からオンデマンド配信される予定。中尾氏の基調講演、ローカル5G市場を牽引する各社のセッションに加え、九州電力によるローカル5Gを活用した発電所保安のDX事例紹介の特別講演も配信される。ぜひローカル5Gの最先端に触れてみてほしい。