どうする? テレワーク移行時の意外な盲点「固定電話」の取り次ぎ

テレワークから取り残されている2つの領域、「紙」と「固定電話」 この数年、クラウドサービスやモバイル端末を活用して、場所や時間にとらわれることなく業務を進める「働き方改革」が少しずつ広がってきた。そして2020年、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策として緊急事態宣言が出されると、この動きは一気に加速した。オフィスへの出勤を必要最低限にとどめるべく、日本企業でもいよいよ本格的に、またこれまでにないほど大規模にテレワークが広がりつつある。

当初は「テレワークなんて、本当にできるの?」という懐疑的な声も少なくなかった。だがいざ始めてみると、Web会議やチャットを駆使して打ち合わせや商談をしたり、クラウドサービスを駆使して資料を作成・共有したりと、意外とスムーズに業務ができるという手応えを感じた人は多いようだ。日本生産性本部が2020年5月に行った調査によると、「コロナ禍収束後もテレワークを行いたいか」という質問に「続けたい」とした割合は63%に上った。こうした状況を踏まえ、テレワークの継続・拡大に向けて動き始めた企業も登場している。

だが、いくらテレワークを支援するツールや環境が整っても、100%すべての業務がカバーできているわけではない。その代表例が契約書や請求書、社内申請といった紙の書類への捺印業務で、電子サインサービスが広がりつつあるとはいえ、いまだに印鑑を押すためだけに出社を余儀なくされている社員が存在する。

そしてもう1つ、意外なようだがテレワークから取り残されている領域がある。それが「固定電話」だ。メールやチャット、オンライン会議でさまざまなコミュニケーションが取れるようになったのは事実だが、緊急時の連絡や込み入った相談、急ぎの確認などはやはり、電話による会話がものを言う。

なのに、「今急いで確認したい」と思って、名刺やWebサイトなどさまざまな場所で告知されている番号に電話しても不在だったり、留守番電話が応答するだけでは、ビジネスに多くの支障が生じ、信頼を損ないかねないだろう。

交代で電話番? 固定電話の取り次ぎで浮上したさまざまな課題 もともと日本企業において、電話によるコミュニケーションは独特の発展を遂げてきた。従業員一人一人にではなく、オフィスの「島」ごと、つまり部署ごとに電話番号が割り当てられ、受け取った従業員が取り次ぎや保留・転送を行うという業務フローに合わせ、オンプレミスのPBXが固定電話に必要なさまざまな機能を提供してきた。

このため、固定電話宛ての着信をオフィス以外の場所で受けるのは難しい。中には、「電話なら、携帯でもやりとりできるでしょ?」と思う人がいるかもしれない。互いの携帯電話番号を交換している担当者同士の連絡ならばそれでもいいかもしれないが、会社や部署の代表電話宛ての問い合わせとなると話は別だ。

結局は「運用でカバー」というわけで、従業員が交代で電話番をしたり、特定の従業員の携帯電話に転送するといった苦肉の策を取っている企業は意外と多い。

図表 柔軟な働き方を阻害する、日本の電話文化

柔軟な働き方を阻害する、日本の電話文化

ただ、人が頑張って電話を受けるにしても、PBXで実現していたグループ着信や転送といったさまざまな機能は利用できず、内線電話のようにスムーズには転送できない。このため、取り次ぎや申し送り時のミスによっていつまでたっても折り返しの電話が来ないといったトラブルを招きかねない。それでなくても特定の従業員に負荷が集中したり、新型コロナウイルスへの感染リスクを冒させるのは、あまりいい方法とは言えないだろう。

個人の携帯電話を活用するにしても、やはりプライベートな電話番号を業務に使うとなると、抵抗は少なくないだろう。月ごとに個人の通話料と業務用途の通話料を計算し、精算するという新たな負荷も生じる。せっかく便利なスマートフォンを従業員が所有しているのにうまく活用できず、中途半端なテレワーク環境になってしまうのは、いかにももったいない状態だ。

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