コロナ禍でリモートワークが定着するなか、ビジネスツールとしての存在を確立したのがチャットだ。特に社内のやり取りに関しては、メールを打つ回数がめっきり減ったという人も多いだろう。
ビジネスチャットでは、Microsoft Teams、LINE WORKS、Chatwork、そしてSlackなどが国内でシェアを分け合っている状況だ。これらが最近力を入れているのが、これまで社内コミュニケーションを主戦場としてきたチャットの「社外への拡張」と「業務アプリケーション連携」である。
デジタル上の職場を意味する“Digital HQ”というコンセプトを打ち出すSlackは、ユーザーが社外のメンバーとダイレクトメッセージをやり取りできる機能「Slackコネクト」を2021年にリリースした。また、営業支援やスケジュール/タスク管理ツールといった業務アプリケーションとの連携も拡大。Slack上で様々な情報を共有することで業務効率化に役立てるケースも増えてきている。
そのSlackが2022年7月27日に報道機関向けの説明会を開催した。導入企業2社が登壇し、ビジネスチャットをリモートワークの基盤として、そして業務効率化の武器として活用する方法を紹介した。
1社目はGMOインターネットグループ。上場10社を含む107社で7000名余の従業員が働いている。
GMOインターネットは2021年8月に、Slackを“メインのチャットツール”として採用した。それまで使っていた別のチャットツールに代えて正式採用したのだが、グループSV・シナジー推進室・室長の佐藤崇氏は、「以前のチャット機能には特段の不満はなかった」と振り返った。
では、なぜSlackを導入したのか。その理由は「チャットツールではなく、メッセージングプラットフォームであること」だと同氏は語った。「稟議、勤怠管理、工程管理、会議と社内ツールが増え続けていた。切り替えながら働くことで業務効率が低下する。これを統合してくれるプラットフォームを探していて、Slackでこれを解決しようとした」
グループ共通のコミュニケーションツールとしてSlackを使う方針を定めたのは、新型コロナウイルス感染拡大によって在宅勤務体制へ移行した2020年1月だった。
ただし、GMOインターネットグループでは各社がそれぞれに最適なツールを選択して利用するスタンスであるため、その時点でSlackをメインで使っているのは1割程度に過ぎなかったという。だが、現在は8割がSlackをメインのチャットツールとして活用。残る2割も、Slackをサブに使っている。
こうした体制で課題となったのが、グループ各社で契約プランや運用ポリシーが異なることだった。「Slackの視点では、グループ内とはいえ“他社”の扱い」(佐藤氏)となる。この解決策となったのが、社内のメンバーと同じように社外の人・組織とつながることができる「Slackコネクト」だ。
Slackは、プロジェクトやチームごとに作る専用スペース「チャンネル」上でメッセージやファイルのやり取りを行う。Slackコネクトを使うと、このチャンネルを安全に外部の組織とつなげたり、ダイレクトメッセージ(DM)を送ったりすることができる。「ゲスト」として社外の人をチャンネルに招待するよりも密なコミュニケーションが可能だ。
GMOインターネットグループが正式採用した時点では、「Slackコネクトの上限数が20だったので、大変だった」と佐藤氏は話すが、現在は上限が250に拡大。「グループ各社の主体性を尊重しつつコミュニケーションツールできる、業務効率化の大きな武器」(佐藤氏)として活用されている。