KDDIと京セラは2024年12月16日、ミリ波(28GHz帯)の通信エリアを効率的に拡張する無線中継技術の開発に成功したと発表した。
中継機が受信機能(ドナー)と送信機能(サービス)の双方を備え、無線環境に適応して動的に役割を切り替えられることが同技術の柱。KDDIによると、自律的にエリアを形成・復旧するミリ波中継技術として世界で初めて成功したという。
従来の中継技術では、基地局から受信するアンテナをドナー面、増幅して送信するアンテナをサービス面と役割を決める中継方法が一般的であり、エリアを構築する上では、基地局に対して各アンテナの役割と指向方向を調整する必要があった。
これに対し、同技術の中継器では、各アンテナでドナー面とサービス面の両機能を具備し、ミリ波基地局から受信したアンテナ面をドナー面として、その他アンテナをサービス面として動的に切り替えることで、ミリ波エリアの自律的なエリア形成と効率的なエリア拡張を実現する。これにより、中継器同士が網目のようにつながり、メッシュ状のエリア構築を可能にするという。建物建設や樹木などの環境変化により中継ルートが遮蔽された場合も、常に最適な中継ルートを自律的に選択し、最適化を行う。
また、この中継器装置は電源供給だけで動作し、バックホール回線も必要がないため、設置が容易なことに加え、オペレーションコストの大幅な削減も実現できるという。合わせて、中継器を縦216mm、横216mm、高さ246mmに小型化、4.9kgに軽量化。一般的なミリ波基地局と比較し大きさと重さを約7割削減し、街路灯などへの設置を可能としたとしている。
同技術のフィールドでの性能確認を目的に、東京都が推進する「つながる東京」展開方針の下、東京都と新宿区が保有する街路灯および地下出入口などに、合計22台の中継器を設置した。試験は2024年10月29日から実施し、西新宿地区の約600メートル四方の範囲において、既存のミリ波のカバー率と比較し、道路のカバー率を33%から99%に拡大したことを確認したという。試験は2025年3月31日まで継続する予定。
同技術は5G高度化だけでなく、高周波数化が進む6Gにおいても適用可能であり、高周波数帯の利用促進に大きく貢献するとしている。試験結果に基づき、トラフィックが今後増加すると見込まれる繁華街や駅、競技場などにおけるさらに高速かつ安定した通信サービスの提供に向け、同技術の2025年度の実用化を目指す。