sXGPはローカル5G導入へのファーストステップ ビー・ビー・バックボーンが打ち出した新戦略

「2020年は、sXGPが大きく飛躍する年になるだろう」

こう語るのは、ソフトバンクの子会社でsXGP事業を手掛けるBBバックボーンの新道粋久営業企画課課長。2020年度に実施が予定されているsXGPの運用帯域の拡張が、その契機になると見るのだ。

sXGPは、事業所コードレスで使われている「自営PHS」の後継として開発されたLTEベースの自営無線システムで、2017年に1.9GHz 帯のデジタルコードレス用帯域での利用が認められた。

sXGPの大きな特徴の1つに、基地局(アクセスポイント)側で端末の出力を制御することなどで、市販のLTE端末をそのまま免許不要の自営無線システムで使えるようにした点が挙げられる。対応するのは1.9GHz帯LTEバンド(Band39)をサポートした端末で、利用にはsXGPの技術基準適合証明等を新たに取得する必要がある。

sXGPの運用帯域の拡張は、2020年7月に音声サービスが終了する公衆PHSの周波数帯を活用して行われる。

公衆PHS用帯域を活用してsXGPの新たな運用チャネルが設けられる (出典:総務省 情報通信審議会資料より抜粋)
公衆PHS用帯域を活用してsXGPの新たな運用チャネルが設けられる
(出典:総務省 情報通信審議会資料より抜粋)[画像をクリックで拡大]

この施策は、2つの点でsXGPの普及を大きく加速させることになると見られる。まず挙げられるのが、自営PHSとの共存が可能になることだ。

現行のsXGPは、同じ周波数帯を利用する自営PHSに干渉を与える懸念があるため、自営PHSが使われている場所の近くでの運用は制限されており、これが普及のネックの1つとなっている。

「自営PHSを導入している病院にsXGPを検討していただこうとしても、試験を行うこともできなかった」と新道氏は打ち明ける。オフィス街でも、近くに自営PHSの事業所コードレスを使っている会社があれば、導入できなくなるため、提案が難しかった。

自営PHSと帯域が異なる新チャネルを利用することで、sXGPはこうした場所の制約から解き放たれる。

もう1つのポイントは、通信速度の向上が可能になることだ。

現行のsXGPは5MHz幅の運用帯域を用いて下り最大12Mbps 、上り最大4bpsのスループットを実現しているが、。帯域幅拡大に伴い増速が見込まれ使い勝手がさらに向上する。

新道氏は、増速により産業分野でのsXGPの活用領域が大きく広がる可能性があると説明する。

「sXGPは、内線電話での利用を想定して開発されたものだが、お客様からはデータ通信で利用したいというご要望が強く、特に工場などでは高速な通信速度が求められている。帯域拡張によりお客様のニーズにマッチした製品が提供できるようになると期待している」

注目されるのは、BBバックボーンが、帯域拡張を機にsXGPをローカル5G導入への「ファーストステップ」と位置づけたことだ。sXGPからローカル5Gに円滑に移行できる手段を提供することで、さらに多様なユースケースに対応することを狙っている。新道氏はこの戦略を次のように説明する。

「ローカル5Gは、これからの企業ネットワークを考える上で無視できない存在になっている。とはいえ、技術やコスト、制度整備の状況などを考えると、本格的に利用されるのは、まだ先になる。そこでBBバックボーンでは、まずsXGPでお客様のニーズにお応えし、これを円滑にローカル5Gへ発展させる道筋を提供していく」

では、BBバックボーンが描くsXGPから5Gへの移行シナリオとは、具体的にどのようなものなのか――。

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