ジュニパーネットワークスのエンタープライズ向けビジネスが好調だ。サービスプロバイダー市場に強いイメージのある同社だが、FY2023にはエンタープライズ事業の売上が全体売上の46%に達した。同事業の成長率は年27%と高い。
もちろん、サービスプロバイダー向け事業が低調というわけではない。FY2023の売上は55億6500万ドル。代表取締役社長の古屋知弘氏によれば「すべての地域で売上が増加している。過去3年間、5%以上の成長率を維持している」状況だ。
まさにエンタープライズ事業の伸びがジュニパーの成長を支えている状況だが、「その主軸になっているのが、AI Driven Enterpriseだ」と古屋氏は話した。
AI Driven Enterpriseとは、2019年にジュニパーが買収したMist社のAIエンジン「Mist AI」によって、ネットワーク運用の自動化・最適化を行うソリューションのこと。ネットワークの領域でいわゆる「AIOps」を実現した先駆的なソリューションである。
国内でもユーザーが増えており、東京大学やQTnet、JA大阪電算らが採用。また、企業名は非公開ながら、衣料品製造販売や不動産デベロッパー、金融機関の大手企業も活用している。
ジュニパーは今後もAI Driven Enterpriseを前面に押し出して、エンタープライズ市場の開拓を加速させる考えだ。古屋社長は「ITインフラに運用革命を起こしたい」と意気込んだ。特に、大手製造、リテール・流通・不動産などの多店舗展開企業、そして学術・公共分野に対してAIOpsの浸透を図っていくという。
その戦略の基盤となるのが、2024年3月1日に発表した「AI-Native Networking Platform」だ。AIOpsのさらなる浸透を目指して新たに設計したプラットフォームであり、次の2点が従来との大きな違いである。
1つが「デジタルツイン」の活用だ。ユーザー企業のネットワークの双子をデジタル上に再現。コンフィグ変更や機器の入れ替え・拡張などの際に、デジタルツイン上でシミュレーションや検証を行うことができる。
通常、設定変更や機器の入れ替え・増設を行って問題が発生した場合には、従前の設定・構成に切り戻しを行い、原因や影響範囲を分析した後にまた同じ手順を繰り返す。この手戻りによる時間・コストの浪費が抑えられるのが、デジタルツインの最大のメリットだ。副社長の上田昌広氏は、「問題が起きる前に、そのリスクを減らす。手戻りが格段に減る」とその効果を強調した。