朝日ネットが“非純正”光トランシーバーを選んだ2つの理由

インターネット接続サービス「ASAHIネット」やIPv6接続サービス「v6 コネクト」を主軸に多様な通信サービスを提供するISP業界の老舗、朝日ネット。同社は2020年、コアルーターのリプレースを機にネットワーク設備の調達法を大きく変える決断をした。ルーターに挿入して使う光トランシーバーに、サードパーティ製の非純正品を選択したのだ。

「その理由は2つある」と朝日ネット システム基盤部の辰巳氏は話す。1つがコストの低廉化。もう1つが、管理・運用の簡便化だ。


朝日ネット システム基盤部の辰巳氏

100G光トランシーバーのコストが激減
今回、朝日ネットが導入したサードパーティ製光トランシーバーはⅡ-Ⅵ社製で、100G-LR4、40G-LR4等で計100本以上。商流もコアルーター本体とは分け、光トランシーバーはマクニカから調達した。今後も継続して調達を計画しているという。なお、マクニカは他にも複数のデータセンター/クラウドサービス事業者などにサードパーティ製トランシーバーを納入し、“3rd Party Optics”の導入・運用を支援している。

第1の目的であるコスト低廉化の効果は目覚ましいものだったと辰巳氏は語る。「100G QSFP28-LR4で、1本あたりのコストは大幅に下がった」。純正品を使った場合の光トランシーバーのコストはルーター本体のそれを上回るほど膨らむが、このコスト構造を劇的に改善できた。

また、数十本の100Gトランシーバーをまとめて調達するのが常である通信サービスプロバイダーにとっては、単純に“安く済む”だけに留まらないメリットももたらした。「純正品の価格感だと経営に対するインパクトも大きく、決裁に時間がかかるためトラフィック増への対応が後手後手になりがちだった。コストが圧倒的に下がればそんな状況も改善され、先手を打って対応できる」(同氏)。

第2の目的である管理・運用の簡便化も、この低コスト化が下地にある。

「光トランシーバーを消耗品として扱えるようにすることで、管理・運用をできるだけ簡単にしたかった」と辰巳氏。「問題が起きたらすぐに予防交換できるように、時間のあるときに検査する。また、固定資産ではないため、不具合があれば容易に廃棄できるようにしたかった」という。ゆくゆくは、実際の需要に比べて余裕のあるネットワーク容量を確保することで、障害対応のオペレーションそのものも変革したいと展望する。「1つの系が壊れても、すぐに直すのではなく“いつか直せばいい”という対応ができるくらいのキャパシティを用意できるようになりたい。トランシーバーが安く調達できればそれも可能になる。将来的にそんな状態に持っていければ、運用は本当に楽になるはず」だ。


図表1 3rd Party Opticsを活用したネットワーク構成のイメージ

朝日ネットでは現在(2020年11月時点)、新たに導入したコアルーターの導入・構築作業を行っており、これに用いるトランシーバーは基本的にⅡ-Ⅵ社製を用いる方針だ(図表参照)。アクセスルーターとの接続等ですでに3rd Party Opticsを使用しており、2カ月ほどの運用において特に問題は出ていないという。コスト効果および安定性ともに十分な手応えを感じている様子だ。

ただ、このように多くのメリットをもたらす3rd Party Opticsだが、実際に導入・運用するにあたっては少なくない懸念と苦労もあったと辰巳氏は振り返る。非純正トランシーバーの活用は、まだまだチャレンジングな要素も多い。次に、朝日ネットがそのハードルをどうやって乗り越えたのかを見ていこう。

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