
「大企業向けの最先端のAIを世界で初めて日本から始める。我々が始める」。ソフトバンクグループ 会長兼社長の孫正義氏は2025年2月3日に開催した法人向けイベント「AIによる法人ビジネスの変革」でこう力を込めた。
OpenAIとソフトバンクグループは同日、合弁会社「SB OpenAI Japan」を設立し、企業用AI「Cristal intelligence」(以下、クリスタル)を日本の主要企業に対し、独占的に販売していくと発表した。
ソフトバンクグループはクリスタルの第1号ユーザーにもなり、その開発・運用費用としてSB OpenAI Japanに約4500億円(30億米ドル)相当の年間利用料を支払うという。

クリスタルは、個々の企業向けにカスタマイズされたAIだ。ソフトバンクグループは、グループ内に約2500ある基幹システムのソースコードをはじめ、業務用メール、資料、コールセンターの会話など、あらゆるデータをAIに「全読みさせ、グループ内の統合した大脳」(孫氏)を作るという。
これにより、ソースコードを理解したAIがシステムを最新言語にバージョンアップしたり、その企業特有の知識を持ったAIがすべての会議や交渉に参加して一緒にディベートしたり、コールセンターでの顧客の会話を代行したりする世界がやってくるとした。

「1年前にはAGI(汎用人工知能は)は『10年以内にやってくる』と申し上げたが、数カ月前に私は『2~3年以内』と訂正した。今、私は『本当にもっと早くやってくる』とコメントしたい」
孫氏はこう述べたうえで、「AGIは企業、とりわけ大企業から始まると考えている」とした。
AGIを実現するには、非常に多くの知恵・データも不可欠だが、企業内には「知恵を出すための材料となる企業特有のデータがふんだんにある」こと、そしてAGIの開発にかかるコストをまず払えるのは大企業だからだ。