「IOWNが目指す世界を実現するためには、NTTだけではない、広範な知見や技術が必要になる」。IOWN Global Forumの設立理由について、NTT 研究企画部門 R&Dビジョン担当 担当部長の岩科滋氏はこう説明した。
NTT 研究企画部門 R&Dビジョン担当 担当部長 岩科滋氏
IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)は、NTTが2030年頃の実用化に向けて推進している次世代コミュニケーション基盤の構想。その最大の特徴は、ネットワークから端末までをエンドツーエンドで光化する「オールフォトニクス・ネットワーク」を目指していることだ。
オールフォトニクス・ネットワークの概要
これまで主にネットワークで使われてきた光技術を、端末やサーバーでの情報処理にも適用。具体的には、デバイス内のチップ間やメニーコアチップ内のコア間の伝送、チップ内の信号処理なども光化することで、光から電気への変換処理を不要にし、低消費電力や低遅延を実現する。
また、ネットワークにおいても、異なるサービスを1つの光ファイバーの異なる波長に割り当て、大容量・高品質化を図る。
NTTはオールフォトニクス・ネットワークの目標性能として、低消費電力、低遅延、大容量・高品質の3項目それぞれについて、約100倍の向上を掲げている。
オールフォトニクス・ネットワークの目標性能
AIなどを高度に活用したスマートな社会を実現するうえでは、「それを支える電力が大きな課題になっている」と岩科氏は指摘。さらに「自動運転における大量の車両の動きを瞬時に認識・判断して制御するためには、遅延やゆらぎのない通信が必要」「五感+αの臨場感の体験には、膨大な情報の相互通信が必要」などと述べ、「エレクトロニクスからフォトニクスの世界にシフトすることで、これらの社会課題を解決したい」とIOWNの意義を同氏は説明した。
NTTはエレクトロニクスからフォトニクスへの世界のシフトを目指す