Cat.6Aがスタンダードに 10G時代のLANケーブル

10G伝送が当たり前になる時代が見えてきた。クラウド活用や映像伝送の増加などを背景に、高速大容量通信へのニーズはますます高まっており、ネットワークもそれに合わせて進化している。新規に無線LANアクセスポイント(AP)を購入する場合、そのほとんどがWi-Fi 6に対応しているが、無線区間の速度は理論値で9.6Gbps。次世代規格のWi-Fi 7(仮称)に至っては30Gbps以上が目標となっている。

無線通信が高速大容量化していく中で、有線部分についても見直しが進んできている。ネットワークの高速化を検討する際、まずはWAN回線の変更、最新規格のルーターやスイッチングハブの採用、不要なハブを減らすといったネットワーク構成変更などの施策から優先して取り組むべきだが、メタルケーブル等のLANケーブルの重要性も忘れてならない。

「LANケーブルで最も大事な役割は、いかに信号伝送損失を防ぐかだ」と指摘するのはベガシステムズ 代表取締役社長の若尾和正氏だ。

LANケーブルのCatとは?

LANケーブル関連の代表的な課題・トラブルがエイリアンクロストークである。複数のLANケーブルを並べて敷設した場合に、隣接するケーブルに信号が漏れる事象であり、発生すると通信品質が著しく下がる。高速大容量化によって、伝送する信号の周波数が高くなるとエイリアンクロストークの発生するリスクは高くなる。「今までの1Gbps程度の無線であれば、Cat.5eで複数本敷設しても大きなトラブルにならないが、Wi-Fi 6クラスになるとCat.5eなら複数本のケーブルが必要になってしまい、エイリアンクロストークのリスクを無視できなくなる」と日本製線 取締役 開発部 Managerの浅香芳晴氏は解説する。

つまるところ、LANには高い周波数帯域まで減衰せず伝送可能な物理構造が求められていると言えよう。メタルケーブルの物理構造や最大通信速度、伝送帯域、コネクターなどは、「Category(Cat)」という形で規格化されている(図表)。

図表 ケーブル規格と通信速度

図表 ケーブル規格と通信速度

現在主に利用されている規格はCat.5eまたはCat.6だが、「当社の場合、Cat.6Aの売上はまだ全体の1割ほどだが、採用が急速に増えており、今後はCat.5eのシェアを上回るだろう」と日本製線 取締役 営業本部長の辻堅一郎氏は見る。

Cat.6Aの需要を大きくけん引したのが、文部科学省が推進する「GIGAスクール構想」である。同構想の標準仕様書では、LANケーブルについて、「基幹部分は原則10Gbpsで接続可能なCat.6A以上ケーブルの利用を指定する」と記述されている。

現実的には、各学校が10Gクラスのネットワークを構築することは困難だったと予想されるが、敷設工事に大きなコストや時間がかかるLANケーブルだけでも10G対応できるよう強く推奨した形と推測される。「Cat.6 AU/UTPの標準的な仕様に準拠したケーブルであれば、内部にスリット入り金属テープが入れてあり、外部への信号漏洩リスクを抑えられる」と浅香氏は述べる。こうした特性から、Cat.6Aの需要は今後もますます拡大していくと予想される。

光ケーブルを敷設している様子

光ケーブルを敷設している様子。大型の現場では、写真のように接続箱で複数の光ケーブルを融着し、収容している(出典:ベガシステムズ)
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