「シスコは最早、インフラだけを提供する会社ではない。製品ベンダーとしての立場から一歩踏み込んで、お客様に寄り添う戦略的ビジネスパートナーにならなければならない」
7月27日に開催したオンライン記者説明会で、シスコシステムズ 代表執行役員社長の中川いち朗氏はそう述べた。
スイッチやルーター等のネットワーク製品の国内シェアは50%を超え、さらにコミュニケーション/コラボレーションツールのWebexや、各種セキュリティサービスでも多くのユーザーを獲得している同社だが、DXを推進する顧客企業にもっと深く「寄り添う」ためには、新たな取り組みが不可欠だという。
そこで欠かせないのが、シスコ製品/サービスを販売し、そこに付加価値を加える存在となるパートナーとの連携強化だ。「あらゆる日本企業との価値共創が必要だ」と中川氏。その具体的な取り組みとして、シスコ製品/サービスと連携するアプリケーション/ソリューション開発を支援するための新たな「エコシステム パートナー プログラム」を発足させた。
今回スタートしたエコシステム パートナー プログラムとは、シスコ製品のAPIを活用したシステム連携や、ネットワーク/セキュリティ製品から得られるデータを活用したアプリケーションを開発するパートナーとの連携を強めることで、シスコとパートナーが相互にビジネス領域を拡大していこうという取り組みだ。
例えば、医療機関向けのアプリケーションを開発・提供する企業がシスコのネットワーク/セキュリティ製品から得られるデータを使うことで、通信品質の変動やセキュリティ驚異をいち早く把握し、医師や看護士がよりセキュアかつ快適なネットワーク環境で働ける状況が作り出せる。
シスコはこれまでも、こうした連携アプリケーションの開発を支援する取り組みを進めてきている。
その1つが「Cisco Devnet」だ。ネットワークプログラマビリティやSDN技術の取得をサポートするためのプログラムで、2020年にはそのスキルを認定する「DevNet認定」をスタート。ネットワークの運用自動化や、シスコ製品と他のアプリケーションとの連携等に活用されている。
だが、パートナー事業統括 専務執行役員の大中裕士氏によれば、シスコパートナーのビジネスは現状、シスコ製品を販売してインフラを構築する「インテグレーターがメイン」だ。2021年から下図表のような4カテゴリーのパートナープログラムを展開してきているが、「ほとんどの日本のお客様は、このうちIntegratorから購入している」。
そのため、シスコもそのパートナーも、DX推進に取り組む顧客企業に対して深く食い込んだ提案ができないことが課題となっているという。ネットワークやセキュリティ、コミュニケーション/コラボレーションといった領域に留まったままでは、ユーザー企業に最も大きな価値を提供できる業務システムやアプリケーションの領域には踏み込めない。「お客様の課題やニーズとは、距離がある」(大中氏)
より多くのアプリ開発者やサービス事業者を巻き込み、この距離を縮めることが今回発足したエコシステム パートナー プログラムの目的だ。上記4カテゴリーのうち「Developer(デベロッパー)」を日本独自に拡張したものであり、シスコ製品と深く連携したアプリケーションの開発を促進することで「お客様のDXの企画フェーズから、色々なアイデアを提案できる」と大中氏は展望する。