周波数帯の利用方法等を定める世界無線通信会議(WRC)は、2023年末に次回のWRC-23が予定されている。そこでは、5Gと無線LANの双方にとって重要なある議題が上る。IMT(移動通信システム)用周波数帯、つまり5Gへの6GHz帯の追加割当だ。
6GHz帯とは、5925MHzから7125MHzまでの計1.2GHz幅の周波数帯のことで、各国で無線LANへの割当が行われている。一方、その一部または全部を5Gで利用することを提案する国も出てきており、WRC-23に向けて議論が活発化しそうだ。
WRC-23で議題となるのは、6GHz帯のうち上部の6425~7125MHz。日本では無線LANに割り当てられる5925~6425M Hz(6GHz帯下部)を除いた700MHz分だ。このうち7025~7125MHzの100MHz幅は世界共通帯域として、6425~7025MHzの600MHz幅は欧露・中東・アフリカを対象として、IMTへの追加割当が検討される。
6GHz帯の割当について、主要国・地域の状況をまとめたのが図表1だ。概ね3つのグループに分かれる。
1.2GHz幅すべてを無線LANに使うのが北中南米や韓国だ。米国は2020年4月に、カナダと韓国は翌年5月と7月に無線LANでの利用を承認。中南米も、2021年に承認したブラジルと同様の方針を示す国が多い。
これと真逆なのが中国だ。ファーウェイ・ジャパン 標準化・事業推進部 事業戦略・レギュレーション ディレクターの朱厚道氏によれば、「1.2GHz幅すべてを5Gに割り当てる計画を検討している」。同社は通信事業者と「6GHz帯を使った5Gの実験を行っており、主管庁では5Gと他の無線業務との共存に関する検討も進んでいる」。なお、ロシアも「6425~7125MHzを5Gに割り当てることを計画している」。
そして、折衷案を取るのが欧州・中東・アフリカ諸国と日本だ。下部500MHzを無線LANに割り当て、上部700MHzはWRC-23の結論を踏まえて改めて検討・決定する。
EUは2021年6月のEC Decisionで、下部500MHzの無線LANでの利用条件を決定。英独仏等がすでに割当済みだ。上部700MHzは、無線LANと5Gのいずれかの導入を視野に検討を続ける。日本も同様だ。総務省は、下部の割当に伴う技術的条件を示した答申(2022年4月19日)において、上部700MHzについてはWRCを開催する「ITU-R(国際電気通信連合無線通信部門)の審議動向および諸外国の動向等を注視する必要がある」としている。