――9月1日、アラクサラネットワークスの60%の株式を実質的に保有していた日本産業パートナーズが、米フォーティネットに株式を譲渡したと発表され、同日付で保坂さんが社長に就任しました。どういった背景・理由からフォーティネットグループ入りが決まったのですか。
保坂 前の大株主は投資ファンドですから、企業価値を高めた上で株式を手放すという話は元々あったわけです。そうしたなかフォーティネットが手を挙げたのは、アラクサラのネットワーク技術に興味があったからだと思っています。
フォーティネットは「Security driven Networking」というコンセプトを掲げています。ただし、セキュリティには大変強くても、ネットワークの部分に関して、それほど多くの技術者がいるわけではないと聞いています。発表から数日後、社員を集めてタウンホールミーティングを開きましたが、そのときフォーティネットの経営層からも「ネットワークの部分を強化していきたいんだ」というコメントを頂きました。
――フォーティネットは、無線LAN APからスイッチ、SD-WANなどまで、今では総合ネットワークベンダーに近いラインナップを揃えています。とはいえ、まだセキュリティアプライアンスのビジネスが中心ですし、また中小企業向けからスタートしましたから、大企業向けのビジネスについても強化すべき点は残っているように見えます。
保坂 一方、アラクサラは通信事業者やラージエンタープライズのお客様を数多く持っており、そうしたお客様のニーズに適合したスイッチ/ルーターをラインナップしています。
技術的な部分とビジネス的な部分の両面でアラクサラに興味を持っていたと認識しています。
――アラクサラは2004年に日立製作所とNECの合弁会社として設立され、当時の持ち分比率は日立が60%、NECは40%でした。日立はその後2018年に日本産業パートナーズへ株式を譲渡したわけですが、NECは現在も40%の株式を持っているのですか。
保坂 9月時点でNECの持ち分の一部もフォーティネットへ譲渡されており、今はフォーティネット75%、NEC25%という株主構成です。
アラクサラのミッションは2つ――今後の戦略をお聞きする前に、アラクサラの最近のビジネス状況について教えていただけますか。
保坂 ファンドが株主になった2018年以降、2020年までは売上が少し落ちていましたが、今期は盛り返している状況です。ファンドが重視するのは利益ですから、「売上があまり伸びなくても利益をしっかり出せばいい」という方針だったわけです。2018~2020年度はずっと増益で推移しています。
この間、売上が少し落ちていたのは、通信事業者向け機器出荷の端境期となっていたことが要因です。「これではまずい」とみんなが危機感を持ち、エンタープライズ事業の伸びで相殺してきました。超大手製造業に採用されるなどミッションクリティカル系の民需が堅調です。
通信事業者向けについても、新しい製品の出荷が始まり、今期からは持ち直しています。
――フォーティネットグループ入りによって、さらにどんな成長戦略を描いていますか。11月1日に発表したフォーティネットとの合弁事業開始のニュースリリースでは、「アラクサラのLANスイッチとフォーティネットのセキュリティ製品の緊密な連携で革新を起こす」と意気込みました。
保坂 私からフォーティネットに対しては、「アラクサラのミッションは2つある」と話しています。
1つは、フォーティネットと連携し、日本国内のビジネスをさらに強化・拡大していくことです。
もう1つは、アラクサラの持つ技術を活かし、フォーティネットグループの事業拡大に資する製品を実現し、グローバルに提供していくことです。